基本問題158 慣性力

エレベーター内の慣性力

直感的理解
エレベーターが上向きに加速すると、中の人は「体が重くなった」と感じます。これは加速する系(エレベーター内)から見ると、加速と逆向きの見かけの力「慣性力」\(-ma\) が働くからです。台ばかりの読み(垂直抗力 \(N\))は \(m(g+a)\) に増えます。

設定:エレベーターの床に台ばかりを置き、質量 \(m\) の人が乗っている。エレベーターが静止している場合と、上向きに加速度 \(a\) で加速する場合を考える。重力加速度 \(g\)。

(1) はかりの示す値(エレベーター静止時)

静止時は \(N = mg\) なので台ばかりの読みは \(mg\)。

(2) はかりの示す値(上向き加速度 \(a\))

地上(慣性系)から見た運動方程式(上向きを正):

$$ ma = N - mg $$

垂直抗力 \(N\) について解くと:

$$ N = mg + ma = m(g + a) $$

はかりの読みは垂直抗力 \(N\) に等しいので、\(m(g+a)\) となり、静止時より大きくなります。

別解:エレベーター内(非慣性系)から見る方法

エレベーター内から見ると物体は静止。下向きに慣性力 \(ma\) が加わる:

$$N = mg + ma = m(g + a)$$

(3) エレベーターがどのような運動をするか

下向き加速度 \(a\) で動く場合(下降加速 or 上昇減速)の運動方程式(上向きを正):

$$ m(-a) = N - mg \quad \Rightarrow \quad N = m(g - a) $$

はかりの読みは \(m(g-a)\) となり、静止時より小さくなるため体が軽く感じられます。

答え:
(1) \(mg\)

(2) \(N = m(g+a)\)(はかりの読みは増加)

(3) 下向きの加速度で運動するとき(下降時の加速 or 上昇時の減速)、読みは \(m(g-a)\)
Point

加速するエレベーター内の見かけの重さ:上向き加速 → \(N = m(g+a)\)(重くなる)、下向き加速 → \(N = m(g-a)\)(軽くなる)。慣性力 \(-ma\) は加速度と逆向きに現れる。

数値例で確認

上で導いた結果に具体的な数値を代入し、計算の流れを確認します。

電車の加速度 \(a = 3.0\) m/s\(^2\) (進行方向), \(m = 2.0\) kg, \(g = 9.8\) m/s\(^2\) とする:

$$F_{in} = ma = 2.0 \times 3.0 = 6.0 \text{ N (後ろ向き)}$$ $$\tan\theta = \frac{a}{g} = \frac{3.0}{9.8} \fallingdotseq 0.306$$ $$\theta \fallingdotseq 17.0°$$
Point

記号の式に具体的な数値を代入することで、オーダー (桁) と単位を同時に検算できる。入試でも概数での検算は有効。