基本問題161 慣性力

斜面上の小物体と加速する台

直感的理解
水平な床上に置かれた斜面の台が水平に加速すると、台上の小物体には慣性力が加速と逆向きに働きます。斜面の傾き \(\theta\) に対して加速度 \(a = g\tan\theta\) のとき、慣性力の斜面成分と重力の斜面成分がちょうどつり合い、小物体は斜面上で静止します。

設定:水平な床上に傾角 \(\theta\) のなめらかな斜面をもつ台がある。台の上に質量 \(m\) の小物体を置き、台を水平方向に加速度 \(a\) で加速させる。小物体が斜面上で静止して上昇する条件を求める。

斜面の加速度 \(a\) を求める

台と一緒に動く観測者(非慣性系)から見ると、小物体には重力 \(mg\)(下向き)、垂直抗力 \(N\)(斜面に垂直)、慣性力 \(ma\)(水平左向き)の3力が働く。

斜面に沿った方向(斜面上向きを正)のつり合い:

$$ ma\cos\theta - mg\sin\theta = 0 $$ $$ \therefore \quad a = g\tan\theta $$

斜面に垂直な方向のつり合い:

$$ N = mg\cos\theta + ma\sin\theta = mg\cos\theta + mg\tan\theta \cdot \sin\theta = \frac{mg}{\cos\theta} $$

加速度を2倍にしたとき

加速度を \(2a = 2g\tan\theta\) にすると、斜面に沿った力のつり合い式は:

$$ m \cdot 2a \cdot \cos\theta - mg\sin\theta = 2mg\sin\theta - mg\sin\theta = mg\sin\theta > 0 $$

斜面上向きに正味の力が生じるので、小物体は斜面を上昇します。

答え:
小物体が斜面上で静止する条件:\(a = g\tan\theta\)

垂直抗力:\(N = mg\cos\theta + ma\sin\theta = \dfrac{mg}{\cos\theta}\)

加速度を2倍にすると、小物体は斜面を上昇する
補足:慣性系から見た解法

地上(慣性系)から見ると、小物体は台と同じ加速度 \(a\) で水平に加速します。

斜面に沿った方向:\(ma\cos\theta - mg\sin\theta = 0\)

斜面に垂直方向:\(N - mg\cos\theta - ma\sin\theta = 0\)

結果は非慣性系と同じ:\(a = g\tan\theta\)、\(N = mg/\cos\theta\)。

Point

加速する台の上の物体は、非慣性系で慣性力を導入して考えるのが便利。斜面に沿う方向と垂直方向に分解し、つり合い条件を立てる。

数値例で確認

上で導いた結果に具体的な数値を代入し、計算の流れを確認します。

加速度 \(a = 4.0\) m/s\(^2\), 物体 \(m = 1.0\) kg, 動摩擦係数 \(\mu = 0.20\), \(g = 9.8\) m/s\(^2\) とする:

$$F_{in} = ma = 1.0 \times 4.0 = 4.0 \text{ N}$$ $$f_{\max} = \mu mg = 0.20 \times 1.0 \times 9.8 = 1.96 \text{ N}$$ $$a_{rel} = a - \mu g = 4.0 - 1.96 = 2.04 \text{ m/s}^2$$
Point

記号の式に具体的な数値を代入することで、オーダー (桁) と単位を同時に検算できる。入試でも概数での検算は有効。