基本問題183 斜面上のばね振り子

設問(1)〜(5)

直感的理解
斜面上のばね振り子は「重力の斜面方向成分 $mg\sin\theta$」がつりあいの位置を決めます。つりあいの位置を原点にとれば、合力は $F = -kx$ となり水平・鉛直の場合と全く同じ単振動です。傾角 $\theta$ は振動中心をずらすだけで、周期には影響しないのがポイントです。

設定:傾角 $\theta$ のなめらかな斜面上で、ばね定数 $k$ のばねの一端を壁に固定し、他端に質量 $m$ のおもりをつなぐ。斜面に沿って下向き(ばねが伸びる向き)を正とする。

(1) つりあいの位置でのばねの伸び $x_0$:

つりあいの条件では、ばねの弾性力と重力の斜面方向成分がつり合います:

$$kx_0 = mg\sin\theta$$ $$\therefore \quad x_0 = \frac{mg\sin\theta}{k}$$

(2) つりあいの位置からの変位 $x$ での合力 $F$:

つりあいの位置から斜面下方に $x$ だけ変位すると、ばねの伸びは $x_0 + x$ になります。斜面方向の運動方程式(下向き正)は:

$$F = mg\sin\theta - k(x_0 + x) = mg\sin\theta - kx_0 - kx$$

つりあいの条件 $kx_0 = mg\sin\theta$ を代入すると:

$$F = mg\sin\theta - mg\sin\theta - kx = -kx$$

重力の影響が消え、水平ばね振り子と同じ復元力になります。

(3) 運動方程式:

合力 $F = -kx$ を $F = ma$ に代入すると:

$$m\frac{d^2 x}{dt^2} = -kx$$

これは角振動数 $\omega = \sqrt{k/m}$ の単振動の方程式です。

(4) 自然長の位置から静かに離した場合の振幅:

自然長の位置ではばねの伸びは $0$ です。このときつりあいの位置からの変位は $-x_0$(斜面上方に $x_0$)です。静かに離す(初速 $0$)ので、この点が振動の端であり:

$$A = x_0 = \frac{mg\sin\theta}{k}$$

(5) 周期:

運動方程式 $m\ddot{x} = -kx$ より、角振動数 $\omega = \sqrt{k/m}$ なので:

$$T = \frac{2\pi}{\omega} = 2\pi\sqrt{\frac{m}{k}}$$

この式に傾角 $\theta$ は含まれません。斜面上のばね振り子の周期は傾角によらず、水平・鉛直の場合と同じです。

答え:
(1) $x_0 = \dfrac{mg\sin\theta}{k}$
(2) $F = -kx$
(3) $m\dfrac{d^2x}{dt^2} = -kx$
(4) $A = \dfrac{mg\sin\theta}{k}$
(5) $T = 2\pi\sqrt{\dfrac{m}{k}}$(傾角によらない)
補足:なぜ周期は傾角によらないのか

つりあいの位置を原点にとると、合力は $F = -kx$ です。この式に $\theta$ は含まれません。運動方程式 $ma = -kx$ の角振動数は $\omega = \sqrt{k/m}$ であり、これは $\theta$ に無関係です。

$\theta = 0$(水平)でも $\theta = 90°$(鉛直)でも周期は同じ $T = 2\pi\sqrt{m/k}$ です。

別解:エネルギー保存で最大速度を求める

つりあいの位置で運動エネルギー最大:

$$\frac{1}{2}kA^2 = \frac{1}{2}mv_{\max}^2$$ $$v_{\max} = A\sqrt{\frac{k}{m}} = \frac{mg\sin\theta}{k}\sqrt{\frac{k}{m}} = g\sin\theta\sqrt{\frac{m}{k}}$$
Point

斜面上のばね振り子の周期 $T = 2\pi\sqrt{m/k}$ は傾角 $\theta$ によらない。水平($\theta=0$)でも鉛直($\theta=90°$)でも同じ。傾角は振動中心の位置だけを変える。