基本例題38 鉛直ばね振り子

設問(1) ばね定数 $k$

直感的理解
つりあいの位置では、ばねの弾性力(上向き $kl_0$)と重力(下向き $mg$)がつりあっています。つまり $kl_0 = mg$ が成り立ちます。これがばね定数を求める出発点です。

立式:つりあいの条件より:

求解:

答え:
$$k = \frac{mg}{l_0}$$
Point

鉛直ばね振り子では、つりあいの条件 $kl_0 = mg$ からばね定数を求める。つりあいの位置が振動中心になることを押さえておく。

設問(2) 位置 $x$ での加速度 $a$

直感的理解
つりあいの位置からの変位 $x$ に対して、合力は常に $-kx$ になります。これは重力 $mg$ とばねの弾性力 $k(l_0 + x)$ を足し合わせると、$mg$ の部分と $kl_0$ が打ち消しあって $-kx$ だけが残るためです。つまり重力の効果はつりあい位置のシフトだけで、振動の性質には影響しません。

立式:つりあいの位置を原点として変位 $x$ のとき、ばねの伸びは $l_0 + x$ です。運動方程式は:

つりあいの条件 $mg = kl_0$ より:

よって:

答え:
$$a = -\frac{g}{l_0}x$$
Point

鉛直ばね振り子でも、つりあい位置からの変位 $x$ に対して $ma = -kx$ が成立する。重力はつりあい位置を自然長からシフトさせるだけで、振動の運動方程式は水平の場合と同じ形になる。

設問(3) 角振動数 $\omega$

直感的理解
単振動の一般形 $a = -\omega^2 x$ と設問(2)で得た $a = -\frac{g}{l_0}x$ を見比べると、$\omega^2$ に相当する部分が $\frac{g}{l_0}$ であることがわかります。この「係数比較」は単振動の問題で最も重要なテクニックです。

立式:$a = -\omega^2 x$ と $a = -\dfrac{g}{l_0}x$ を比較して:

答え:
$$\omega = \sqrt{\frac{g}{l_0}}$$
Point

運動方程式を $a = -(\text{正の定数}) \times x$ の形に変形し、$x$ の係数を $\omega^2$ と比較するのが単振動の角振動数を求める定石。$\omega = \sqrt{K/m}$($K$は復元力定数)。

設問(4) 原点 O を通過する時刻 $t_1$ と速さ $v_1$

直感的理解
自然長の位置($x = -l_0$)から離して振動を開始すると、これは振動の端からのスタートです。振動の端から中心(O)までは周期の $\frac{1}{4}$ にあたります。点 O を通過するときは速度が最大で、$v_{\max} = A\omega = l_0\omega$ です。

時刻 $t_1$:小球は $x = -l_0$(自然長の位置)からスタートし、振幅 $A = l_0$ の単振動をします。

$x = 0$ となるのは:

速さ $v_1$:点 O は振動の中心なので速さは最大値です。

答え:
$$t_1 = \frac{\pi}{2}\sqrt{\frac{l_0}{g}}, \qquad v_1 = \sqrt{gl_0}$$
別解:力学的エネルギー保存則による $v_1$ の導出

自然長の位置($x = -l_0$)での力学的エネルギーを基準にします。ばねの弾性力による位置エネルギーのみ考えると:

$$\frac{1}{2}kl_0^2 = \frac{1}{2}mv_1^2$$

ただし $k = mg/l_0$ なので:

$$\frac{1}{2} \cdot \frac{mg}{l_0} \cdot l_0^2 = \frac{1}{2}mv_1^2$$ $$gl_0 = v_1^2 \quad \Longrightarrow \quad v_1 = \sqrt{gl_0}$$
Point

単振動で「端から中心まで」の時間は $T/4$。中心を通るときの速さは最大値 $v_{\max} = A\omega$。途中の時間や速さを求めるには等速円運動との対応(位相)を使う。

数値例で確認

上で導いた結果に具体的な数値を代入し、計算の流れを確認します。

鉛直ばね振り子: \(m = 0.20\) kg, \(k = 50\) N/m, \(g = 9.8\) m/s\(^2\) とする。釣り合いの位置:

$$x_0 = \frac{mg}{k} = \frac{0.20 \times 9.8}{50} = 0.0392 \text{ m}$$ $$\omega = \sqrt{\frac{k}{m}} = \sqrt{\frac{50}{0.20}} \fallingdotseq 15.8 \text{ rad/s}$$ $$T = \frac{2\pi}{\omega} \fallingdotseq 0.398 \text{ s}$$
Point

記号の式に具体的な数値を代入することで、オーダー (桁) と単位を同時に検算できる。入試でも概数での検算は有効。