基本問題203 人工衛星の力学的エネルギー

円軌道上の人工衛星のエネルギー

直感的理解
円軌道の衛星では、運動エネルギー \(K\) は万有引力ポテンシャルエネルギー \(U\) の絶対値の半分です(\(K = -U/2\))。そのため力学的エネルギーは常に負、つまり衛星は地球に束縛されています。エネルギーバーグラフで \(K\)、\(U\)、\(E\) の関係を確認しましょう。

条件:質量 \(m\) の人工衛星が、質量 \(M\) の地球のまわりを半径 \(r\) の円軌道で公転。地球の半径 \(R\)、地表の重力加速度 \(g\)。

(1) 人工衛星の速さ \(v\):

万有引力が向心力を提供するので:

$$\frac{GMm}{r^2} = \frac{mv^2}{r}$$

両辺を \(m\) で割り、\(r\) を掛けると:

$$v^2 = \frac{GM}{r}$$

ここで地表での万有引力 = 重力より \(GM = gR^2\) を代入すると:

$$v = \sqrt{\frac{gR^2}{r}} = R\sqrt{\frac{g}{r}}$$

(2) 運動エネルギー \(K\):

(1) の結果 \(v^2 = gR^2/r\) を用いて:

$$K = \frac{1}{2}mv^2 = \frac{1}{2}m \cdot \frac{gR^2}{r} = \frac{gR^2 m}{2r}$$

(3) 万有引力による位置エネルギー \(U\):

無限遠を基準として、万有引力による位置エネルギーは:

$$U = -\frac{GMm}{r} = -\frac{gR^2 m}{r}$$

(\(GM = gR^2\) を使用)

(4) 力学的エネルギー \(E\):

\(E = K + U\) より:

$$E = \frac{gR^2 m}{2r} + \left(-\frac{gR^2 m}{r}\right) = \frac{gR^2 m}{2r} - \frac{2 \cdot gR^2 m}{2r} = -\frac{gR^2 m}{2r}$$
答え:
(1) \(\displaystyle v = R\sqrt{\frac{g}{r}}\)

(2) \(\displaystyle K = \frac{gR^2 m}{2r}\)

(3) \(\displaystyle U = -\frac{gR^2 m}{r}\)

(4) \(\displaystyle E = -\frac{gR^2 m}{2r}\)
補足:エネルギーの関係

円軌道では常に以下の関係が成り立つ:

$$K = -\frac{U}{2}, \quad E = \frac{U}{2} = -K$$

力学的エネルギーが負であることは、衛星が束縛状態にあることを意味します。\(E = 0\) が脱出(無限遠に到達)の境界条件になります。

Point

円軌道のエネルギー公式:\(K = \dfrac{GMm}{2r}\)、\(U = -\dfrac{GMm}{r}\)、\(E = -\dfrac{GMm}{2r}\)。常に \(E = -K = U/2 < 0\)。軌道半径が大きいほどエネルギーは0に近づく(束縛が弱くなる)。

数値例で確認

上で導いた結果に具体的な数値を代入し、計算の流れを確認します。

\(GM = 4.0\times 10^{14}\) m\(^3\)/s\(^2\), 衛星 \(m = 1.0\times 10^3\) kg, 軌道半径 \(r = 7.0\times 10^6\) m とする:

$$v = \sqrt{\frac{GM}{r}} = \sqrt{\frac{4.0\times 10^{14}}{7.0\times 10^6}} \fallingdotseq 7.56\times 10^3 \text{ m/s}$$ $$E = -\frac{GMm}{2r} = -\frac{4.0\times 10^{14}\times 10^3}{1.4\times 10^7} \fallingdotseq -2.86\times 10^{10} \text{ J}$$ $$K = \frac{1}{2}mv^2 \fallingdotseq 2.86\times 10^{10} \text{ J}$$
Point

記号の式に具体的な数値を代入することで、オーダー (桁) と単位を同時に検算できる。入試でも概数での検算は有効。