基本問題204 人工衛星のエネルギー

地表からの打ち上げと円軌道のエネルギー

直感的理解
人工衛星を打ち上げるには「地表から軌道まで位置エネルギーを持ち上げ」かつ「軌道上で必要な速さを与える」必要があります。エネルギー保存則を使えば、必要な打ち上げ速度が求まります。力学的エネルギーの差がロケットが供給すべきエネルギーです。

条件:質量 \(m\) の人工衛星を地表(半径 \(R\))から高さ \(h\) の円軌道(半径 \(r = R + h\))に投入。\(GM = gR^2\)。

(1) 円軌道上での速さ \(v\):

半径 \(r = R + h\) の円軌道で、万有引力 = 向心力:

$$\frac{GMm}{(R+h)^2} = \frac{mv^2}{R+h}$$

\(GM = gR^2\) を用いて整理すると:

$$v^2 = \frac{GM}{R+h} = \frac{gR^2}{R+h}$$ $$v = \sqrt{\frac{gR^2}{R+h}}$$

(2) 円軌道上での力学的エネルギー:

運動エネルギーと位置エネルギーの和:

$$E_{\text{orbit}} = \frac{1}{2}mv^2 + \left(-\frac{GMm}{R+h}\right)$$

\(v^2 = gR^2/(R+h)\) を代入すると:

$$E_{\text{orbit}} = \frac{gR^2 m}{2(R+h)} - \frac{gR^2 m}{R+h} = -\frac{gR^2 m}{2(R+h)}$$

(3) 地表から打ち上げるのに必要な最小速度 \(v_0\):

地表での力学的エネルギー(速度 \(v_0\) で鉛直に打ち上げ):

$$E_{\text{surface}} = \frac{1}{2}mv_0^2 + \left(-\frac{GMm}{R}\right) = \frac{1}{2}mv_0^2 - \frac{gR^2 m}{R} = \frac{1}{2}mv_0^2 - gRm$$

エネルギー保存 \(E_{\text{surface}} = E_{\text{orbit}}\) より:

$$\frac{1}{2}mv_0^2 - gRm = -\frac{gR^2 m}{2(R+h)}$$

両辺を \(m\) で割り、\(v_0^2\) について解くと:

$$\frac{1}{2}v_0^2 = gR - \frac{gR^2}{2(R+h)} = \frac{2gR(R+h) - gR^2}{2(R+h)} = \frac{gR(R + 2h)}{2(R+h)}$$ $$v_0 = \sqrt{\frac{gR(R+2h)}{R+h}}$$
答え:
(1) \(\displaystyle v = \sqrt{\frac{gR^2}{R+h}}\)

(2) \(\displaystyle E = -\frac{gR^2 m}{2(R+h)}\)

(3) \(\displaystyle v_0 = \sqrt{\frac{gR(R+2h)}{R+h}}\)
補足:第一宇宙速度との関係

\(h = 0\)(地表すれすれ)のとき:

$$v_0 = \sqrt{\frac{gR \cdot R}{R}} = \sqrt{gR} \fallingdotseq 7.9 \text{ km/s}$$

これが第一宇宙速度です。高度が高いほど打ち上げに必要な速度は大きくなります。

Point

打ち上げのエネルギー保存:地表と軌道の力学的エネルギーを等しくおいて打ち上げ速度を求める。\(U = -\dfrac{GMm}{r}\) を忘れずに。地表の位置エネルギーは \(-\dfrac{GMm}{R}\) であり0ではない。