応用問題265 断熱変化

設問(1) 断熱膨張 A→B の仕事

直感的理解
断熱膨張では熱の出入りがない。膨張して外部に仕事をする分、内部エネルギー(=温度)が下がる。仕事 = 温度低下分の内部エネルギー。

立式:断熱変化 \(Q = 0\) より、熱力学第一法則:

答え:
$$W' = \frac{3}{2}R(T_1 - T_2)$$
Point

断熱変化の仕事:\(W' = nC_V(T_\text{初} - T_\text{終})\)。単原子の場合 \(C_V = \dfrac{3}{2}R\)。温度差がわかれば積分不要で仕事が求まる。

設問(2) 等温膨張 A→C で加えられる熱量

直感的理解
等温変化では内部エネルギーが変わらないので、加えた熱はすべて仕事になる。仕事は \(\int p\,dV\) の積分で求め、\(p = nRT/V\) を代入すると対数関数になる。

立式:等温変化 \(\Delta U = 0\) より:

$$Q = W' = \int_{V_\mathrm{A}}^{V_\mathrm{B}} p\,dV = \int_{V_\mathrm{A}}^{V_\mathrm{B}} \frac{RT_1}{V}\,dV$$ $$Q = RT_1 \int_{V_\mathrm{A}}^{V_\mathrm{B}} \frac{1}{V}\,dV = RT_1 \log_e \frac{V_\mathrm{B}}{V_\mathrm{A}}$$
答え:
$$Q = RT_1 \log_e \frac{V_\mathrm{B}}{V_\mathrm{A}}$$
補足:断熱膨張と等温膨張の仕事の比較

p-V 図を見ると、同じ体積変化 \(V_\mathrm{A}\) → \(V_\mathrm{B}\) に対して:

  • 等温膨張(A→C):温度一定なので圧力の下がり方が緩やか → 曲線の下の面積が大きい
  • 断熱膨張(A→B):温度も下がるので圧力がより急に低下 → 面積が小さい

つまり \(W'_\text{等温} > W'_\text{断熱}\) です。等温膨張では外部から熱が供給されるため、同じ膨張でもより多くの仕事ができます。

補足:断熱変化の p-V 関係(ポアソンの式)

断熱変化では \(pV^\gamma = \text{const}\)(ポアソンの式)が成り立ちます。単原子分子では \(\gamma = 5/3\)。

これを用いると断熱曲線上の任意の点の圧力が求まります:

$$p_\mathrm{B} = p_\mathrm{A}\left(\frac{V_\mathrm{A}}{V_\mathrm{B}}\right)^\gamma$$

等温線 \(pV = \text{const}\) と比較すると、\(\gamma > 1\) なので断熱曲線のほうが急に下降します。

Point

等温変化の仕事:\(W' = nRT\ln(V_2/V_1)\)。断熱曲線(\(pV^\gamma\))は等温曲線(\(pV\))より急勾配。同じ膨張では等温のほうが多くの仕事をする。

🧮 数値計算で確認

\(T_1 = 300\) K、\(P_1 = 1.0 \times 10^5\) Pa、\(V_1 = 5.0 \times 10^{-3}\) m³ の気体を等圧で \(T_2 = 600\) K に加熱:

$$V_2 = V_1 \times \frac{T_2}{T_1} = 5.0 \times 10^{-3} \times \frac{600}{300} = 1.0 \times 10^{-2} \text{ m}^3$$ $$W = P\Delta V = 1.0 \times 10^5 \times 5.0 \times 10^{-3} = 500 \text{ J}$$