基本問題250 内部エネルギーの保存

断熱自由膨張と内部エネルギー

直感的理解
断熱容器のコックを開いて気体を真空中に自由膨張させると、外部に仕事をせず(\(W = 0\))、熱の出入りもない(\(Q = 0\))ため、内部エネルギーは変化しません。理想気体の内部エネルギーは温度だけの関数なので、温度も変わりません。

設定:容器 A(体積 \(V_1\))に温度 \(T_1\) の単原子分子理想気体(\(n\) mol)、容器 B(体積 \(V_2\))は真空。断熱壁で覆われた容器間のコックを開く。

熱力学第一法則の適用:

$$\Delta U = Q + W' = Q - W$$

ここで $W'$ は外部から気体にされた仕事(気体がした仕事を $W$ とすると $W' = -W$)。

$$\Delta U = 0 - 0 = 0$$

温度の変化:

理想気体の内部エネルギー $U = \dfrac{3}{2}nRT$ は温度のみの関数なので

$$\Delta U = \frac{3}{2}nR\Delta T = 0 \quad \Rightarrow \quad \Delta T = 0$$

よって温度は変化しない:$T = T_1$

圧力の変化:

状態方程式 $pV = nRT$ より、体積が $V_1 \to V_1 + V_2$ に増加し温度が変わらないので

$$p_1 V_1 = p_2 (V_1 + V_2) \quad \Rightarrow \quad p_2 = \frac{p_1 V_1}{V_1 + V_2}$$
答え:

温度:\(T = T_1\)(変化なし)

圧力:\(p_2 = \dfrac{p_1 V_1}{V_1 + V_2}\)

内部エネルギーの変化:\(\Delta U = 0\)

補足:自由膨張と断熱膨張の違い

自由膨張(真空への膨張):外圧 = 0 なので \(W = 0\)、\(\Delta T = 0\)

断熱膨張(ピストンを押す):気体が外部に仕事をする(\(W > 0\))ので \(\Delta U < 0\)、温度が下がる

どちらも \(Q = 0\) ですが、仕事の有無で結果が異なります。

Point

断熱自由膨張(真空への膨張)では \(Q = 0\)、\(W = 0\) なので \(\Delta U = 0\)(内部エネルギー保存)。理想気体では温度も変化しない。これは「理想気体の内部エネルギーは温度のみの関数」という性質の直接的な帰結です。

数値例で確認

上で導いた結果に具体的な数値を代入し、計算の流れを確認します。

高温気体 \(n_1 = 2.0\) mol, \(T_1 = 400\) K, 低温 \(n_2 = 1.0\) mol, \(T_2 = 300\) K を混合 (単原子:\(C_V=\frac{3}{2}R\)):

$$n_1 C_V T_1 + n_2 C_V T_2 = (n_1+n_2)C_V T_f$$ $$T_f = \frac{n_1 T_1 + n_2 T_2}{n_1+n_2} = \frac{2.0\times 400 + 1.0\times 300}{3.0} \fallingdotseq 366.7 \text{ K}$$ $$U_f = \frac{3}{2}(n_1+n_2)R T_f = \frac{3}{2}\times 3.0\times 8.31\times 366.7 \fallingdotseq 1.37\times 10^4 \text{ J}$$
Point

記号の式に具体的な数値を代入することで、オーダー (桁) と単位を同時に検算できる。入試でも概数での検算は有効。