応用問題405 電流

設問(1) 断面Aを通過する電気量

直感的理解
断面Aから左に $vt$ の距離にある電子だけが、$t$ 秒間に断面Aを通過します。この領域は「体積 $vtS$ の円柱」であり、その中に $nvtS$ 個の自由電子が含まれます。

時刻 $0$ に断面Aの左側 $vt$ [m] の範囲にいた電子が、$t$ [s] 後に断面Aを通過します(図(a)→(b)の変化)。

この円柱の体積は:

$$V_{\text{柱}} = vtS$$

単位体積あたり $n$ 個の自由電子が存在するので、通過する電子の数は:

$$N = n \times vtS = nvtS \text{ [個]}$$

1個の電子の電荷は $e$ なので、通過する電荷量は:

$$Q = Ne = envtS \text{ [C]}$$
答え:
$$Q = envtS \;\text{[C]}$$
Point

「体積 $vtS$ の中にある自由電子がすべて断面を通過する」と考える。電荷量 = 電子数 × 電気素量。

設問(2) 電流の大きさ

直感的理解
電流は「単位時間あたりに断面を通過する電荷量」です。$Q = envtS$ を $t$ で割れば、$t$ が消えて $I = envS$ が得られます。これが電流の微視的表現です。
答え:
$$I = envS \;\text{[A]}$$
Point

$I = envS$ は電流の微視的モデルの基本式。$n$(数密度)、$e$(電荷)、$v$(ドリフト速度)、$S$(断面積)の4つで電流が決まる。

設問(3) 銅の自由電子の速さ

直感的理解
自由電子の数密度 $n$ が途方もなく大きい($10^{28}$ オーダー)ので、1Aの電流を流すのに必要なドリフト速度は極めて遅く、$0.1\;\text{mm/s}$ 以下です。カタツムリより遅い!でも電子の数が膨大なので、十分な電流が流れます。

$I = envS$ を $v$ について解く:

$$v = \frac{I}{enS}$$

数値代入:$S = 1.0\;\text{mm}^2 = 1.0 \times 10^{-6}\;\text{m}^2$

$$v = \frac{1.0}{1.6 \times 10^{-19} \times 8.5 \times 10^{28} \times 1.0 \times 10^{-6}}$$

途中計算:分母を整理すると

$$enS = 1.6 \times 8.5 \times 10^{-19+28-6} = 13.6 \times 10^{3} = 1.36 \times 10^{4}$$ $$v = \frac{1.0}{1.36 \times 10^{4}} \fallingdotseq 7.4 \times 10^{-5} \text{ m/s}$$
答え:
$$v \fallingdotseq 7.4 \times 10^{-5} \;\text{m/s}$$
補足:なぜスイッチを入れると即座に電流が流れるのか

自由電子のドリフト速度は非常に遅いですが、スイッチを入れた瞬間に電場(電気信号)が光速に近い速さで導体全体に伝わります。そのため、すべての電子がほぼ同時に動き始め、瞬時に回路全体で電流が流れます。

Point

$I = envS$ の各量のオーダーを把握しておく。$n \sim 10^{28}\;\text{m}^{-3}$, $e \sim 10^{-19}\;\text{C}$, $S \sim 10^{-6}\;\text{m}^2$ → $v \sim 10^{-5}\;\text{m/s}$。ドリフト速度は非常に遅い。