応用問題442 加速器

設問(1)〜(3) 基本的性質

直感的理解
サイクロトロンでは粒子がディーの中で半円を描き、ギャップを通過するたびに加速されます。加速されると速くなりますが、半径が大きくなるので周期は一定。この「周期一定」がサイクロトロンの核心で、一定周期の交流電圧で連続的に加速できます。

(1) 電荷の正負:

磁場は紙面の裏から表(×印=紙面裏向き)で、粒子は反時計回りに運動する。フレミングの左手の法則(ローレンツ力 $\boldsymbol{F} = q\boldsymbol{v} \times \boldsymbol{B}$)より、この回転方向が成り立つのは電荷がのとき。

(2) 磁場から受ける力:

速さ $v_0$ の荷電粒子が磁束密度 $B$ の磁場中で受けるローレンツ力は、速度と磁場が垂直なので:

$$F = qv_0 B$$

この力は常に速度に垂直(向心力として働く)なので、粒子の速さは変えず方向のみ変える。

数値例:陽子($q = 1.6 \times 10^{-19}$ C)が $v_0 = 5.0 \times 10^{6}$ m/s、$B = 0.50$ T の磁場中で受ける力:

$$F = 1.6 \times 10^{-19} \times 5.0 \times 10^{6} \times 0.50 = 4.0 \times 10^{-13} \text{ N}$$

(3) 最初の円軌道の半径:

ローレンツ力が円運動の向心力となる条件:

$$qv_0 B = \frac{mv_0^2}{r_0}$$

$r_0$ について解くと:

$$r_0 = \frac{mv_0}{qB}$$

数値例:陽子($m = 1.67 \times 10^{-27}$ kg)の場合:

$$r_0 = \frac{1.67 \times 10^{-27} \times 5.0 \times 10^{6}}{1.6 \times 10^{-19} \times 0.50} = \frac{8.35 \times 10^{-21}}{8.0 \times 10^{-20}} = 0.10 \text{ m}$$
答え:
$$(1)\; \text{正の電荷}$$ $$(2)\; F = qv_0 B$$ $$(3)\; r_0 = \frac{mv_0}{qB}$$

設問(4)(5) 周期とエネルギー

直感的理解
半周に要する時間は $T/2 = \pi m/(qB)$ で、速さに無関係です。だから高周波電圧の周期を $T$ に合わせておけば、粒子がギャップに来るたびにちょうど加速方向の電場が立っています。

(4) ディー内の半周時間:

円運動の周期は $T = 2\pi r / v$ であり、$r = mv/(qB)$ を代入すると:

$$T = \frac{2\pi r}{v} = \frac{2\pi}{v} \cdot \frac{mv}{qB} = \frac{2\pi m}{qB}$$

半周(ディー内を半円移動する)に要する時間は:

$$\frac{T}{2} = \frac{\pi m}{qB}$$

この時間は速さ $v$ に依存しない。よって高周波電圧の周期を $T = 2\pi m/(qB)$ に一致させれば、粒子が間隙に到達するたびに加速方向の電場がかかる。

(5) 間隙を通過するたびのエネルギー増加:

ディー間の電位差を $V$ とすると、電荷 $q$ の粒子が1回通過するとき得るエネルギーは:

$$\Delta E = qV$$

$n$ 回通過後の運動エネルギーは:

$$\frac{1}{2}mv_n^2 = \frac{1}{2}mv_0^2 + nqV$$

$v_n$ について解くと:

$$v_n = \sqrt{v_0^2 + \frac{2nqV}{m}}$$

このときの円軌道の半径は $r = mv/(qB)$ より:

$$r_n = \frac{mv_n}{qB} = \frac{m}{qB}\sqrt{v_0^2 + \frac{2nqV}{m}}$$
答え:
$$(4)\; \frac{T}{2} = \frac{\pi m}{qB}$$ $$(5)\; \text{1回の加速で得るエネルギー} = qV$$ $$v = \sqrt{v_0^2 + \frac{2nqV}{m}}, \quad r = \frac{m}{qB}\sqrt{v_0^2 + \frac{2nqV}{m}}$$
補足:サイクロトロンの限界(相対論的効果)

粒子の速さが光速に近づくと、相対論的質量増加により周期 $T = 2\pi m/(qB)$ が一定でなくなり、同期がずれます。これを解決するのがシンクロサイクロトロン(周波数を徐々に変える)やシンクロトロン(磁場も変える)です。

Point

サイクロトロンのポイント:(1) 周期 $T = 2\pi m/(qB)$ は速さに依存しない(2)加速のたびに半径が増大(3)電場は間隙のみで仕事し、磁場は仕事しない(向心力のみ)。