(1) 電荷の正負:
磁場は紙面の裏から表(×印=紙面裏向き)で、粒子は反時計回りに運動する。フレミングの左手の法則(ローレンツ力 $\boldsymbol{F} = q\boldsymbol{v} \times \boldsymbol{B}$)より、この回転方向が成り立つのは電荷が正のとき。
(2) 磁場から受ける力:
速さ $v_0$ の荷電粒子が磁束密度 $B$ の磁場中で受けるローレンツ力は、速度と磁場が垂直なので:
$$F = qv_0 B$$この力は常に速度に垂直(向心力として働く)なので、粒子の速さは変えず方向のみ変える。
数値例:陽子($q = 1.6 \times 10^{-19}$ C)が $v_0 = 5.0 \times 10^{6}$ m/s、$B = 0.50$ T の磁場中で受ける力:
$$F = 1.6 \times 10^{-19} \times 5.0 \times 10^{6} \times 0.50 = 4.0 \times 10^{-13} \text{ N}$$(3) 最初の円軌道の半径:
ローレンツ力が円運動の向心力となる条件:
$$qv_0 B = \frac{mv_0^2}{r_0}$$$r_0$ について解くと:
$$r_0 = \frac{mv_0}{qB}$$数値例:陽子($m = 1.67 \times 10^{-27}$ kg)の場合:
$$r_0 = \frac{1.67 \times 10^{-27} \times 5.0 \times 10^{6}}{1.6 \times 10^{-19} \times 0.50} = \frac{8.35 \times 10^{-21}}{8.0 \times 10^{-20}} = 0.10 \text{ m}$$(4) ディー内の半周時間:
円運動の周期は $T = 2\pi r / v$ であり、$r = mv/(qB)$ を代入すると:
$$T = \frac{2\pi r}{v} = \frac{2\pi}{v} \cdot \frac{mv}{qB} = \frac{2\pi m}{qB}$$半周(ディー内を半円移動する)に要する時間は:
$$\frac{T}{2} = \frac{\pi m}{qB}$$この時間は速さ $v$ に依存しない。よって高周波電圧の周期を $T = 2\pi m/(qB)$ に一致させれば、粒子が間隙に到達するたびに加速方向の電場がかかる。
(5) 間隙を通過するたびのエネルギー増加:
ディー間の電位差を $V$ とすると、電荷 $q$ の粒子が1回通過するとき得るエネルギーは:
$$\Delta E = qV$$$n$ 回通過後の運動エネルギーは:
$$\frac{1}{2}mv_n^2 = \frac{1}{2}mv_0^2 + nqV$$$v_n$ について解くと:
$$v_n = \sqrt{v_0^2 + \frac{2nqV}{m}}$$このときの円軌道の半径は $r = mv/(qB)$ より:
$$r_n = \frac{mv_n}{qB} = \frac{m}{qB}\sqrt{v_0^2 + \frac{2nqV}{m}}$$粒子の速さが光速に近づくと、相対論的質量増加により周期 $T = 2\pi m/(qB)$ が一定でなくなり、同期がずれます。これを解決するのがシンクロサイクロトロン(周波数を徐々に変える)やシンクロトロン(磁場も変える)です。
サイクロトロンのポイント:(1) 周期 $T = 2\pi m/(qB)$ は速さに依存しない(2)加速のたびに半径が増大(3)電場は間隙のみで仕事し、磁場は仕事しない(向心力のみ)。