応用問題443 磁場内での荷電粒子の運動

設問(1) $\theta = 0$ の場合

直感的理解
$\theta = 0$(水平に打ち出し)の場合、粒子は $x < 0$ を直線で進み、$y$ 軸を通過した瞬間に磁場に入ります。磁場中では半円を描いて再び $y$ 軸に戻ります。ローレンツ力は常に速度に垂直なので速さは変わりません

磁場がない領域($x < 0$):P$(-L, d)$ から $x$ 方向に速さ $v$ で等速直線運動

磁場領域($x > 0$)に入った瞬間:

$\vec{v} = v\hat{x}$, $\vec{B} = B\hat{z}$ より、$\vec{F} = q\vec{v} \times \vec{B} = qvB(-\hat{y})$(下向き)

円運動の半径:

$$qvB = \frac{mv^2}{R} \quad \Rightarrow \quad R = \frac{mv}{qB}$$

粒子は磁場中で半円を描き(入射方向が $x$ 軸正方向、磁場で下に曲がる)、$y$ 軸上の点 $(0, d - 2R)$ から磁場を出ます。

磁場内の滞在時間:半円分の弧の長さを速さで割って:

$$t_B = \frac{\pi R}{v} = \frac{\pi}{v} \cdot \frac{mv}{qB} = \frac{\pi m}{qB}$$

数値例:$m = 6.4 \times 10^{-27}$ kg、$q = 3.2 \times 10^{-19}$ C、$v = 2.0 \times 10^{6}$ m/s、$B = 0.20$ T のとき:

$$R = \frac{6.4 \times 10^{-27} \times 2.0 \times 10^{6}}{3.2 \times 10^{-19} \times 0.20} = \frac{1.28 \times 10^{-20}}{6.4 \times 10^{-20}} = 0.20 \text{ m}$$ $$t_B = \frac{\pi \times 6.4 \times 10^{-27}}{3.2 \times 10^{-19} \times 0.20} = \frac{2.01 \times 10^{-26}}{6.4 \times 10^{-20}} = 3.1 \times 10^{-7} \text{ s}$$
答え:
$$\text{磁場内の滞在時間} = \frac{\pi m}{qB}$$ $$y \text{軸を横切る点の座標} = d - 2R = d - \frac{2mv}{qB}$$
Point

磁場の境界で粒子の速さは変わらない(ローレンツ力は仕事をしない)。入射角と射出角は等しい(反射の法則と同様)。

設問(2) $\theta = \pi/3$ でPに戻る条件

直感的理解
$\theta = \pi/3$ で斜めに打ち出された粒子は、$y$ 軸に斜めに入射し、磁場領域で円弧を描いて射出されます。粒子がPに戻るには、軌道全体が $y = d$ の線に対して対称でなければなりません。これから $B$ の値(= 半径 $R$)が決まります。

幾何学的条件:

粒子は $y$ 軸に角度 $\theta = \pi/3$ で入射します。磁場中で半径 $R$ の円弧を描き、再び $y$ 軸に角度 $\theta$ で出射します。

粒子がPに戻るには、入射点と出射点が $y$ 軸上で対称であり、かつ出射後の直線がPを通る必要があります。

入射点を $(0, y_1)$ とすると:$y_1 = d + L\tan\theta = d + L\sqrt{3}$

磁場中の円弧による $y$ 方向の変位:$\Delta y = 2R\sin\theta \cdot \cos\theta$(= $R\sin 2\theta$... 幾何から)

出射角 = 入射角(鏡面反射と同様)なので、出射点は $(0, y_1 - 2R(1-\cos\theta))$

出射後、角度 $\theta$ で直線を進んでPに戻る条件から:

対称性より、$y$ 軸上の入射点と出射点の中点が $y = d$ であり、軌道全体が $y = d$ に関して鏡像対称:

$R = mv/(qB)$ より:

答え:
$$B = \frac{mv}{2\sqrt{3}qL} = \frac{\sqrt{3}mv}{6qL}$$

設問(3) PからPに戻るまでの時間

直感的理解
全行程は「P→y軸(直線)」+「磁場内(円弧)」+「y軸→P(直線)」の3区間。直線部分は等速直線運動、磁場内は等速円運動です。

直線部分(2区間):

Pから $y$ 軸までの距離は $L/\cos\theta$(斜めに進む)ので、片道の時間は:

往復で $2t_1 = \dfrac{4L}{v}$

磁場中の円弧:

$\theta = \pi/3$ で入射した場合の円弧の角度は $\pi - 2\theta = \pi/3$

全時間:

答え:
$$T = \frac{L}{v}\left(4 + \frac{2\sqrt{3}\pi}{3}\right)$$
補足:磁場境界での反射則

荷電粒子が磁場の境界に角度 $\theta$ で入射すると、円弧を描いて同じ角度 $\theta$ で射出されます。これは光の反射と似ていますが、「反射面」が磁場の境界であり、「反射」のメカニズムはローレンツ力による円運動です。

磁場中の円弧が占める角度は $\pi - 2\theta$ です($\theta = 0$ で半円 $\pi$、$\theta \to \pi/2$ で $0$)。

Point

磁場境界問題は「入射角 = 出射角」と「円弧角 $= \pi - 2\theta$」を使って幾何学的に解く。全行程 = 直線区間 + 円弧区間の時間の和。