基本問題451 自己誘導

自己誘導と RL 回路

直感的理解
自己誘導とは、コイル自身に流れる電流が変化したとき、その変化を妨げる向きに起電力が発生する現象です。水道管の慣性に例えると、水流(電流)を急に変えようとしても、慣性(インダクタンス)が変化に抵抗します。$L$ が大きいほど「電流を変えにくい」コイルです。

設定:自己インダクタンス $L$ のコイル、抵抗 $R$、起電力 $E$ の直流電源からなる回路。スイッチ S を閉じた直後の自己誘導起電力を考える。

自己誘導起電力の公式:

$$V_L = -L\frac{\Delta I}{\Delta t}$$

コイルは電流の変化を妨げる向きに起電力を発生させます。

(1) スイッチを閉じた直後:

電流が $0$ から増加し始める。キルヒホッフの第二法則より回路方程式は:

$$E = L\frac{\Delta I}{\Delta t} + RI$$

$t = 0$ では $I = 0$ なので:

$$E = L\frac{\Delta I}{\Delta t} \quad \Rightarrow \quad \frac{\Delta I}{\Delta t} = \frac{E}{L}$$

数値例:$E = 10$ V、$L = 0.50$ H のとき:

$$\frac{\Delta I}{\Delta t} = \frac{10}{0.50} = 20 \text{ A/s}$$

(2) 十分時間が経ったとき(定常状態):

定常状態では電流が一定になるため $\dfrac{\Delta I}{\Delta t} = 0$。回路方程式より:

$$E = RI \quad \Rightarrow \quad I = \frac{E}{R}$$

数値例:$E = 10$ V、$R = 5.0$ $\Omega$ のとき:

$$I = \frac{10}{5.0} = 2.0 \text{ A}$$

(3) コイルの自己誘導起電力の大きさ:

自己誘導起電力の大きさは、任意の時刻で次式で与えられる:

$$|V_L| = L\left|\frac{\Delta I}{\Delta t}\right|$$

スイッチ直後では $|V_L| = L \cdot \dfrac{E}{L} = E$(電源の起電力と等しい)。定常状態では $|V_L| = 0$。

数値例:$L = 0.50$ H、$\Delta I / \Delta t = 20$ A/s のとき:

$$|V_L| = 0.50 \times 20 = 10 \text{ V} = E$$
答え:
(1) スイッチを閉じた直後の電流変化率:$\dfrac{\Delta I}{\Delta t} = \dfrac{E}{L}$
(2) 定常電流:$I = \dfrac{E}{R}$
(3) 自己誘導起電力:$|V_L| = L \left|\dfrac{\Delta I}{\Delta t}\right|$
補足:RL回路の過渡応答

RL 回路の電流は指数関数的に定常値に近づきます:

$$I(t) = \frac{E}{R}\left(1 - e^{-Rt/L}\right)$$

時定数 $\tau = L/R$ で、$t = \tau$ のとき電流は定常値の約 63% に達します。

Point

自己誘導起電力 $V_L = -L \dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ は電流の変化を妨げる向きに発生する。定常状態($\Delta I/\Delta t = 0$)ではコイルは単なる導線として振る舞う。