基本問題452 自己誘導

自己誘導と RL 回路の過渡応答

直感的理解
自己インダクタンス $L$ のコイルは、電流の変化を「嫌がる」部品です。スイッチを入れた瞬間、コイルは電流を流すまいとして逆起電力を発生させますが、時間とともに電流は定常値に近づき、コイルの抵抗がないので最終的にはただの導線のように振る舞います。

設定:自己インダクタンス $L$ のコイル、内部抵抗無視、抵抗 $R$、起電力 $E$ の電池をつないだ RL 回路。スイッチ S を閉じた後の電流と自己誘導起電力の変化を求める。

(1) スイッチを閉じた直後($t = 0$):

キルヒホッフの第二法則より回路方程式は:

$$E = L\frac{dI}{dt} + RI$$

$t = 0$ では $I = 0$(コイルは電流の急変を許さない)なので:

$$E = L\frac{dI}{dt}\bigg|_{t=0} \quad \Rightarrow \quad \frac{dI}{dt}\bigg|_{t=0} = \frac{E}{L}$$

数値例:$E = 10$ V、$L = 0.20$ H、$R = 10$ $\Omega$ のとき:

$$\frac{dI}{dt}\bigg|_{t=0} = \frac{10}{0.20} = 50 \text{ A/s}$$

このとき自己誘導起電力は $V_L = E = 10$ V(電源の起電力と等しく、すべての電圧がコイルにかかる)。

(2) 十分時間が経ったとき($t \to \infty$):

定常状態では $\dfrac{dI}{dt} = 0$ なので、コイルの自己誘導起電力はゼロとなり、コイルは単なる導線として振る舞う:

$$E = RI \quad \Rightarrow \quad I = \frac{E}{R} = \frac{10}{10} = 1.0 \text{ A}, \quad V_L = 0$$

(3) 一般解:

回路方程式 $E = L\dfrac{dI}{dt} + RI$ を初期条件 $I(0) = 0$ で解くと:

$$I(t) = \frac{E}{R}\left(1 - e^{-Rt/L}\right)$$

時定数:

$$\tau = \frac{L}{R} = \frac{0.20}{10} = 0.020 \text{ s} = 20 \text{ ms}$$

$t = \tau = 20$ ms で定常値の約 63%、$t = 3\tau = 60$ ms で約 95% に到達する。

$t = \tau$ のときの電流:

$$I(\tau) = \frac{10}{10}\left(1 - e^{-1}\right) = 1.0 \times 0.632 = 0.63 \text{ A}$$

自己誘導起電力は:

$$V_L(t) = L\frac{dI}{dt} = E\,e^{-t/\tau}$$

$t = \tau$ のとき $V_L = 10 \times e^{-1} = 10 \times 0.368 = 3.7$ V。

答え:
(1) $t = 0$:$I = 0$, $V_L = E$
(2) $t \to \infty$:$I = E/R$, $V_L = 0$
(3) 時定数 $\tau = L/R$ で指数関数的に定常状態に近づく
補足:スイッチを切った瞬間

定常電流 $I_0 = E/R$ が流れている状態でスイッチを切ると、コイルは電流を流し続けようとして大きな逆起電力を発生します。これが蛍光灯の点灯や自動車のイグニッションコイルの原理です。理論的には:

$$V_L = -L\frac{dI}{dt}$$

$dI/dt$ が非常に大きくなるため、$V_L$ は電源電圧 $E$ よりもはるかに大きくなりえます。

Point

RL 回路の時定数は $\tau = L/R$。$L$ が大きいほど、$R$ が小さいほど電流の立ち上がりは遅い。$t = \tau$ で定常値の約 63%、$t = 3\tau$ で約 95%、$t = 5\tau$ で約 99% に到達する。