基本例題88 ローレンツ力と誘導起電力

ローレンツ力による誘導起電力

直感的理解
導体棒が磁場中を動くと、棒の中の自由電子も一緒に動きます。動く荷電粒子にはローレンツ力が働き、電子は棒の一方の端に押しやられます。これにより棒の両端に電位差(誘導起電力)が生じます。最終的にローレンツ力と棒内の電場による力がつり合って定常状態になります。

設定:磁束密度 $B = 1.0 \times 10^{-2}$ T の磁場中で、長さ $l = 0.50$ m の導体棒 PQ を速さ $v = 10$ m/s で磁場に垂直に移動させる。

(1) ローレンツ力の大きさ

導体棒中の自由電子1個に働くローレンツ力は:

$$F = evB = 1.6 \times 10^{-19} \times 10 \times 1.0 \times 10^{-2} = 1.6 \times 10^{-20} \text{ N}$$

(2) 正に帯電する端

$\vec{v} \times \vec{B}$ の向きから、電子は N 側に移動するため、M 側が正に帯電します。

(3) 棒中の電場

電子の移動により棒内に電場 $E$ が発生。この電場が電子に及ぼす力は $eE$。

(4) つり合い条件

電子の移動が止まるとき、ローレンツ力と電場の力がつり合います:

$$eE = evB \quad \Rightarrow \quad E = vB = 10 \times 1.0 \times 10^{-2} = 0.10 \text{ V/m}$$

(5) MN 間の電位差

$$V = El = 0.10 \times 0.50 = 0.050 \text{ V} = 50 \text{ mV}$$

これが誘導起電力の公式 $V = vBl$ です。

答え:
(1) $F = evB$
(2) M 側($v \times B$ の向き)
(3) $eE$
(4) $E = vB$
(5) $V = El = vBl$
補足:誘導起電力の公式の導出

$V = vBl$ は、磁場を横切る導体棒に生じる誘導起電力の基本公式です。これは2つの方法で導けます:

  1. ローレンツ力から(本問の方法):電子に働く $F = evB$ と電場の力 $eE$ のつり合い
  2. ファラデーの法則から:$V = -\dfrac{\Delta \Phi}{\Delta t} = -B \dfrac{\Delta S}{\Delta t} = -Blv$(面積変化率)

どちらも同じ結果 $|V| = vBl$ を与えます。

Point

磁場を横切る導体棒の誘導起電力 $V = vBl$ は、ローレンツ力による電荷の分離で生じる。電子の受けるローレンツ力の向きで、棒のどちら側が正になるか判定できる。