基本例題89 磁場を横切る金属棒に生じる誘導起電力

[A] 電池接続時の金属棒の運動

直感的理解
電池をつなぐと金属棒に電流が流れ、電磁力で棒が動き出します。棒が動くと誘導起電力 $vBl$ が発生し、これが電池の起電力 $E$ に対抗します。速度が上がるほど誘導起電力が大きくなり、正味の電圧と電流が減少 → 力も減少。最終的に $vBl = E$ となり加速度がゼロ(終端速度)に達します。

(1) 誘導起電力

速さ $v$ で動く長さ $l$ の導体棒が磁場 $B$ を横切ると:

$$V_{\text{ind}} = vBl$$

(2) 電流の大きさ

キルヒホッフの法則 II より(電池の起電力 $E$ と誘導起電力 $vBl$ が逆向き):

$$E - vBl = IR \quad \Rightarrow \quad I = \frac{E - vBl}{R}$$

(3) 金属棒に加わる力

磁場中の電流が受ける力:

$$F = BIl = \frac{(E - vBl)Bl}{R}$$

(4) 終端速度 $v_0$

十分長い時間が経過し、一定の速さになった($F = 0$、すなわち $I = 0$)とき:

$$E - v_0 Bl = 0 \quad \Rightarrow \quad v_0 = \frac{E}{Bl}$$
答え:
(1) $V = vBl$ [V]
(2) $I = \dfrac{E - vBl}{R}$ [A]
(3) $F = \dfrac{(E - vBl)Bl}{R}$ [N]
(4) $v_0 = \dfrac{E}{Bl}$ [m/s]

[B] 外部から力を加えて動かす場合

直感的理解
[B] では外部から力を加えて棒を等速で動かします。棒に生じる誘導起電力は [A] と同じ $V = vBl$ ですが、電池がないため回路の起電力源は棒自身です。抵抗 $r$ を含む回路に電流 $I' = \dfrac{vBl}{R + r}$ が流れます。

(5) 外力で動かすときの電流

誘導起電力は [A] と同じ $V = vBl$。電池がなく、抵抗 $R + r$ の回路に:

$$I' = \frac{vBl}{R + r}$$

電流の向きはレンツの法則より $y$ 軸の負の向きです。

答え:
(5) $I' = \dfrac{vBl}{R + r}$ [A]、$y$ 軸の負の向き
別解:ファラデーの法則による導出

棒が $x$ 軸正の方向に速度 $v$ で動くと、回路の面積は時間 $\Delta t$ で $\Delta S = lv\Delta t$ だけ増加します。

$$|V| = \left|\frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\right| = B \frac{\Delta S}{\Delta t} = Blv$$

レンツの法則から、磁束の増加を妨げる向きに誘導電流が流れるため、電流は $y$ 軸の負の向きです。

Point

レール上の金属棒の問題では、(1) $V = vBl$ で誘導起電力、(2) キルヒホッフの法則で電流、(3) $F = IBl$ で力の3ステップで解く。終端速度は $vBl = E$ のとき

🧮 具体的な数値例

たとえば \(B = 0.50\) T の磁場中で、長さ \(l = 0.20\) m の導体が \(v = 3.0\) m/s で動く場合:

$$\mathcal{E} = Blv = 0.50 \times 0.20 \times 3.0 = 0.30 \text{ V}$$ $$R = 2.0 \text{ Ω のとき } I = \frac{\mathcal{E}}{R} = \frac{0.30}{2.0} = 0.15 \text{ A}$$