例題17 運動方程式

設問(1) 張力 $T = 148\,\text{N}$ のときの加速度

直感的理解
物体を糸で吊り上げるとき、糸の張力が重力より大きければ物体は上に加速し、重力より小さければ下に加速します。エレベーターに乗っているとき、上昇開始時に体が重く感じるのは、体を支える力(張力に相当)が重力より大きいからです。スライダーで張力を変えると、力の大小関係と加速度の向きの対応が体感できます。

設定:質量 $m = 10\,\text{kg}$、重力加速度 $g = 9.8\,\text{m/s}^2$、糸の張力 $T = 148\,\text{N}$。

Step 1:力の確認

物体にはたらく力は、鉛直上向きの張力 $T$ と、鉛直下向きの重力 $W = mg$ の2力です。

Step 2:正の向きを設定

鉛直上向きを正とし、加速度を $a\,[\text{m/s}^2]$ とおきます。

Step 3:運動方程式を立てる

$a > 0$ なので、向きは鉛直上向きです。

答え:
$$a = 5.0\,\text{m/s}^2\text{(鉛直上向き)}$$
Point

運動方程式の立て方:(1) 正の向きを決める → (2) 物体にはたらく力をすべて列挙 → (3) $ma = $(正の向きの力)$-$(負の向きの力)で合力を求める。

設問(2) 鉛直下向きに $2.0\,\text{m/s}^2$ で下降中の張力

直感的理解
物体が下向きに加速しているとき、重力が張力に「勝っている」状態です。エレベーターが下降し始めるとき体がフワッと軽く感じるのは、体を支える力(床からの抗力)が重力より小さくなっているからです。

設定:鉛直下向きに加速度 $a = 2.0\,\text{m/s}^2$ で下降中。

立式:鉛直下向きを正として運動方程式を立てます。

計算:

答え:
$$T = 78\,\text{N}$$
Point

下向きに加速 → 重力 $>$ 張力。$T = m(g - a)$ で張力は重力より小さくなる。

設問(3) 一定の速さ $4.0\,\text{m/s}$ で上昇中の張力

直感的理解
「速度が一定」=「加速度がゼロ」=「力がつりあっている」。速度の大きさや向きに関係なく、等速運動なら合力はゼロです。エレベーターが一定速度で動いているとき、体重計の目盛りは通常通り --- つまり張力=重力です。

設定:一定の速さ $4.0\,\text{m/s}$ で上昇 → 等速運動 → $a = 0$

立式:速度が一定なので加速度 $a = 0$。運動方程式より:

計算:

答え:
$$T = 98\,\text{N}$$
補足:速度の向きと力の向きの関係

「上向きに動いているから上向きの力が大きい」というのはよくある誤解です。ニュートンの第一法則(慣性の法則)より、物体が等速直線運動をしているとき、合力はゼロです。

力は速度の変化(加速度)を決めるのであって、速度の向き自体を決めるのではありません。

具体的な数値計算

質量 $m = 2.0$ kg の物体を一定の速さで水平面上を引くとき、動摩擦係数 $\mu' = 0.30$ から動摩擦力は

$$f = \mu' mg = 0.30 \times 2.0 \times 9.8 \fallingdotseq 5.88 \text{ N}$$

等速運動なので $a = 0$、ニュートンの第二法則より合力は $0$。したがって水平に加える力は摩擦力とつりあう:

$$F = f \fallingdotseq 5.88 \text{ N}$$

この物体を $s = 5.0$ m 動かす仕事は

$$W = Fs = 5.88 \times 5.0 \fallingdotseq 29.4 \text{ J}$$

等速運動では運動エネルギーが増加しないので、与えた仕事はすべて摩擦で熱になります。

Point

等速運動 → $a = 0$ → 合力 $= 0$。速度が一定なら、物体にはたらく力はつりあっている。速度の大きさや向きは関係ない。