例題20 静止摩擦力と動摩擦力

設問(1) すべりだす直前の力(最大静止摩擦力)

直感的理解
引く力を徐々に大きくしていくと、静止摩擦力も同じだけ大きくなって物体を止め続けます(力のつりあい)。しかし静止摩擦力には限界があり、これが最大静止摩擦力 $F_0 = \mu N$。これを超えると物体はすべりだし、摩擦力は動摩擦力 $F' = \mu' N$ に切り替わります。動摩擦力は最大静止摩擦力より小さいので、すべりだす瞬間に急に摩擦力が小さくなり加速します。

Step 1:垂直抗力を求める

鉛直方向の力のつりあいより:

Step 2:最大静止摩擦力

すべりだす直前の力は最大静止摩擦力に等しいので:

答え:
$$f = F_0 = 9.8\,\text{N}$$
Point

最大静止摩擦力 $F_0 = \mu N$。静止摩擦力は引く力に応じて $0$ から $F_0$ まで変化する。$F_0$ を超えるとすべりだす。

設問(2) $f_1 = 9.9\,\text{N}$ で引いたときの摩擦力と加速度

直感的理解
$f_1 = 9.9\,\text{N}$ は最大静止摩擦力 $9.8\,\text{N}$ をわずかに超えています。物体はすべりだし、摩擦力は動摩擦力 $F' = 4.9\,\text{N}$ に切り替わります。引く力 $9.9\,\text{N}$ と動摩擦力 $4.9\,\text{N}$ の差が合力となり、物体を加速させます。

判定:$f_1 = 9.9\,\text{N} > F_0 = 9.8\,\text{N}$ なので、物体はすべっています。

動摩擦力:

運動方程式:右向きを正として

答え:
摩擦力の大きさ:$F' = 4.9\,\text{N}$(動摩擦力)
$$a = 2.5\,\text{m/s}^2\text{(右向き)}$$
補足:静止摩擦力と動摩擦力の違い

静止摩擦力:物体が静止しているとき、運動を妨げる向きにはたらく。引く力に応じて $0$ から $F_0 = \mu N$ まで変化する。

動摩擦力:物体がすべっているとき、運動を妨げる向きにはたらく。大きさは常に一定で $F' = \mu' N$。速さには依存しない。

一般に $\mu' < \mu$ なので、動摩擦力 $<$ 最大静止摩擦力。これが「すべりだすと急に動きやすくなる」理由です。

数値計算:質量 \(m = 2.0\) kg、加速度 \(a = 3.0\) m/s² のとき:

$$F = ma = 2.0 \times 3.0 = 6.0 \text{ N}$$ $$W = mg = 2.0 \times 9.8 = 19.6 \text{ N}$$
Point

すべっているかどうかを判定してから、摩擦力の種類を決める。すべっているなら動摩擦力 $F' = \mu' N$(一定)を使い、$ma = $(引く力)$-$(動摩擦力)で加速度を求める。