糸を右に引くと糸巻きも右に転がる。「引っ張った方に転がるなんて変だ」と感じるかもしれません。しかし、床との接点 P まわりのモーメントを考えると納得できます。糸が巻かれた内側の軸(半径 $r$)に力がはたらくので、接点 P から見ると力の作用線は P の上側を通り、右向きの力は時計回りのモーメントを生みます。この時計回りの回転は、糸巻きを右に転がす方向です。
接点 P まわりのモーメントで考える:
糸巻きが床の上で転がるとき、床との接点 P は瞬間的に静止しています。したがって P まわりのモーメントが回転方向を決めます。
糸を水平に引く($\alpha = 0$)場合、糸の張力 $F$ の作用線は P から高さ $R - r$(外半径 $-$ 内軸半径)だけ上を通ります。この場合:
水平に引くと糸巻きは糸を引く方向に転がる。接点 P まわりで、糸の張力は時計回りのモーメントを生むため。
転がる方向は「力の作用線と接点の位置関係」で決まる。力の作用線が接点より上を通れば、力の方向に転がります。直感に頼らず、接点まわりのモーメントで判断しましょう。
糸を水平から徐々に上向きに傾けていくと、力の作用線が接点 P に近づき、やがて P を通過します。P を通過した後は、力の作用線は P の反対側に出るため、モーメントの方向が逆転し、転がる方向が変わります。臨界角度 $\alpha_c$ は $\cos\alpha_c = r/R$ で決まります。
糸の引く角度を $\alpha$(水平からの角度)とすると、P まわりの力のモーメントのうでの長さは:
$$d = R\cos\alpha - r$$ここで $R\cos\alpha$ は接点 P と力の作用線の距離に相当し、$r$ は内軸の半径です。
数値例:質量 2.0 kg の物体に 10 N の力を加えると、加速度は \(a = F/m = 10/2.0 = 5.0\) m/s² です。\(3.0\) s 後の速度は \(v = at = 5.0 \times 3.0 = 15\) m/s となります。
関連する基本公式:
$$ F = ma $$ $$ v = v_0 + at $$$\cos\alpha_c = r/R$ を満たす臨界角度 $\alpha_c$ を境に転がる方向が逆転する。
糸巻きが転がるとき、床との接点 P は「瞬間的に静止している点」です(転がりの条件)。したがって、P まわりのモーメントがゼロなら角加速度もゼロ、正なら反時計回り、負なら時計回りの角加速度が生じます。中心 O まわりで考えることもできますが、その場合は摩擦力のモーメントも含める必要があり計算が複雑になります。
「転がる物体の回転方向」は接点まわりのモーメントで判定するのが最も簡単です。摩擦力の大きさを求める必要がなく、外力のモーメントだけで回転方向がわかります。この方法は糸巻きに限らず、転がる球体や車輪の問題にも使えます。