教科書(物理) 演習問題6:人工衛星のエネルギー

設問(1):運動エネルギーと位置エネルギー

直感的理解

万有引力による位置エネルギーは「無限遠をゼロ」として負の値をとる。地球に近いほどエネルギーが低い(深い井戸の底にいるイメージ)。円軌道上の衛星は「万有引力 = 向心力」の条件から運動エネルギーが \(K = |U|/2\) と決まる。

半径 \(r\) の円軌道を回る質量 \(m\) の人工衛星。中心天体の質量を \(M\) とする。

運動エネルギー

万有引力 = 向心力より \(mv^2/r = GMm/r^2\)、したがって:

$$ K = \frac{1}{2}mv^2 = \frac{GMm}{2r} $$

万有引力による位置エネルギー(無限遠基準)

$$ U = -\frac{GMm}{r} $$

力学的エネルギー

$$ E = K + U = \frac{GMm}{2r} - \frac{GMm}{r} = -\frac{GMm}{2r} $$
答え (1)
$$ K = \frac{GMm}{2r}, \quad U = -\frac{GMm}{r}, \quad E = -\frac{GMm}{2r} $$

設問(2):脱出に必要なエネルギー

直感的理解

力学的エネルギーが負 → 束縛状態(地球の重力に捕まっている)。エネルギーを外部から加えて \(E \geq 0\) にすれば脱出できる。円軌道から脱出するには \(|E| = GMm/(2r)\) のエネルギーが必要。

軌道上で衛星にエネルギー \(\Delta E\) を加えて脱出させるには:

$$ E + \Delta E \geq 0 $$ $$ -\frac{GMm}{2r} + \Delta E \geq 0 $$

最小のエネルギーは:

$$ \Delta E = \frac{GMm}{2r} = K $$

つまり、現在の運動エネルギーと同じだけのエネルギーを追加すれば脱出できる。

数値例:質量 2.0 kg の物体が高さ 5.0 m から落下すると、位置エネルギーの減少は \(mgh = 2.0 \times 9.8 \times 5.0 = 98\) J。地面での速さは \(v = \sqrt{2gh} = \sqrt{2 \times 9.8 \times 5.0} = \sqrt{98} \fallingdotseq 9.9\) m/s です。

答え (2)
脱出に必要な最小エネルギー: $$ \Delta E = \frac{GMm}{2r} $$ これは円軌道上の運動エネルギー \(K\) に等しい。
補足:第二宇宙速度との関係

地表(\(r = R\))から脱出する場合、必要な運動エネルギーは

$$ K = \frac{GMm}{R} \quad \therefore\, \frac{1}{2}mv_2^2 = \frac{GMm}{R} $$ $$ v_2 = \sqrt{\frac{2GM}{R}} = \sqrt{2gR} $$

これが第二宇宙速度の導出。第一宇宙速度(\(v_1 = \sqrt{gR}\))の \(\sqrt{2}\) 倍。

Point

円軌道では \(K = |U|/2\)、\(E = -K = U/2\)。これらの関係は「ビリアル定理」とも呼ばれる。\(E < 0\) が束縛状態、\(E = 0\) が脱出の境界、\(E > 0\) が非束縛状態。