教科書(物理) 例題4:電位の重ね合わせ

解法

直感的理解

電位はスカラー量(向きのない数値)です。電場の重ね合わせではベクトルの足し算が必要でしたが、電位の重ね合わせは単純な数値の足し算・引き算で済みます。正電荷がつくる電位は正、負電荷がつくる電位は負。中点のように等距離の点では、等量の正負電荷の電位がちょうど打ち消し合います。

\(+Q\) と \(-Q\) の点電荷が \(10a\) 離れて置かれています。中点 O、および O と B の間にある点 P(A から \(8a\)、B から \(2a\))の電位を求めます。

電位の公式:

$$ V = \frac{kQ}{r} $$

正電荷は正の電位、負電荷は負の電位をつくります。複数の電荷がある場合は各電荷の電位を足し合わせるだけです(ベクトルの向きを考える必要なし)。

方針:各点について A からの距離 \(r_A\) と B からの距離 \(r_B\) を求め、\(V = V_A + V_B = \dfrac{kQ}{r_A} + \dfrac{k(-Q)}{r_B}\) で計算する。中点 O は A, B から等距離なので \(+Q\) と \(-Q\) の電位が打ち消し合い \(V_O = 0\)。P は B(負電荷)に近いため負の電位が大きくなり全体の電位は負になります。下のシムで観測点を動かして確認しましょう。

Step 1:点 O の電位

O は A, B の中点なので、A からの距離 \(r_A = 5a\)、B からの距離 \(r_B = 5a\) です。

$$ V_O = \frac{kQ}{5a} + \frac{k(-Q)}{5a} = \frac{kQ}{5a} - \frac{kQ}{5a} = 0 $$

Step 2:点 P の電位

P は A から \(8a\)、B から \(2a\) の位置にあります(O と B の間)。

$$ V_P = \frac{kQ}{8a} + \frac{k(-Q)}{2a} = \frac{kQ}{8a} - \frac{kQ}{2a} $$

通分して:

$$ V_P = \frac{kQ}{8a} - \frac{4kQ}{8a} = \frac{kQ - 4kQ}{8a} = -\frac{3kQ}{8a} $$
答え:

点 O の電位:\(V_O = 0\)

点 P の電位:\(\displaystyle V_P = -\frac{3kQ}{8a}\)

補足:電位が 0 になる点はどこにある?

等量の正負電荷 \(+Q, -Q\) の場合、電位が 0 になる条件は:

$$ \frac{kQ}{r_A} = \frac{kQ}{r_B} \quad \Rightarrow \quad r_A = r_B $$

つまりAB の中点(今回の O)と、AB の垂直二等分線上のすべての点で電位が 0 になります。

これは等電位面として重要な概念です。等量異符号の電荷がつくる \(V = 0\) の面は、2点の垂直二等分面になります。

補足:P で電位が負になる直感的理由

P は B(\(-Q\))に近く、A(\(+Q\))から遠い位置にあります。

  • \(V_A = +kQ/(8a)\):遠い A からの正の寄与は小さい
  • \(V_B = -kQ/(2a)\):近い B からの負の寄与は大きい

負の寄与が正の寄与を上回るため、\(V_P < 0\) となります。一般に、負電荷に近づくほど電位は下がり、正電荷に近づくほど上がります。

🧮 具体的な数値で確認

\(Q = 4.0 \times 10^{-6}\) C、\(a = 0.10\) m、\(k = 9.0 \times 10^{9}\) N·m²/C² として、O と P の電位を具体的に計算してみましょう。

点 O の電位:

A からの距離 \(r_A = 5a = 0.50\) m、B からの距離 \(r_B = 5a = 0.50\) m なので:

$$ V_O = \frac{kQ}{r_A} + \frac{k(-Q)}{r_B} = \frac{9.0 \times 10^{9} \times 4.0 \times 10^{-6}}{0.50} - \frac{9.0 \times 10^{9} \times 4.0 \times 10^{-6}}{0.50} $$ $$ = 7.2 \times 10^{4} - 7.2 \times 10^{4} = 0 \text{ V} $$

点 P の電位:

A からの距離 \(r_A = 8a = 0.80\) m、B からの距離 \(r_B = 2a = 0.20\) m なので:

$$ V_P = \frac{kQ}{0.80} + \frac{k(-Q)}{0.20} $$ $$ = \frac{9.0 \times 10^{9} \times 4.0 \times 10^{-6}}{0.80} - \frac{9.0 \times 10^{9} \times 4.0 \times 10^{-6}}{0.20} $$ $$ = 4.5 \times 10^{4} - 18.0 \times 10^{4} = -13.5 \times 10^{4} \text{ V} $$ $$ = -1.35 \times 10^{5} \text{ V} \fallingdotseq -1.4 \times 10^{5} \text{ V} $$

文字式の結果と照合すると \(V_P = -\dfrac{3kQ}{8a} = -\dfrac{3 \times 9.0 \times 10^{9} \times 4.0 \times 10^{-6}}{8 \times 0.10} = -1.35 \times 10^{5}\) V で一致します。P は B(負電荷)に近いため、大きな負の電位になっていることがわかります。

Point

電位の重ね合わせの計算手順:(1) 各点電荷から観測点までの距離を求める、(2) \(V = kQ/r\) で各電荷の電位を計算(負電荷は符号ごと代入)、(3) 各電位を足し合わせる。ベクトルの向きを考えなくてよい分、電場より計算が簡単です。ただし符号(正負)を間違えないよう注意しましょう。