教科書(物理) 問5:電気力線と電場の強さ

(1) 電気力線の総数

直感的理解

電気力線の総数は電荷の大きさだけで決まり、距離には無関係です。これはガウスの法則の本質で、「閉じた面を貫く電気力線の総数は、中の電荷だけで決まる」ということです。

Step 1:電気力線の総数の公式を思い出す

電荷 \(Q\) [C] から出る電気力線の総数 \(N\) は:

$$ N = \frac{Q}{\varepsilon_0} $$

ここで \(\varepsilon_0\) は真空の誘電率です。クーロンの法則の比例定数 \(k_0\) との関係は:

$$ k_0 = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0} \quad \Longrightarrow \quad \varepsilon_0 = \frac{1}{4\pi k_0} $$

Step 2:\(N\) を \(k_0\) で表す

$$ N = \frac{Q}{\varepsilon_0} = \frac{Q}{\dfrac{1}{4\pi k_0}} = 4\pi k_0 Q $$
答え:\(N = 4\pi k_0 Q\) 本
補足:なぜ電気力線の本数は距離によらないのか

電気力線は途中で生まれたり消えたりしません(湧き出しも吸い込みもない)。したがって、電荷を囲むどんな閉曲面を通過する電気力線の総数も、面の大きさ・形に関係なく、中の電荷だけで決まります。これがガウスの法則の本質です。

Point

電荷 \(Q\) から出る電気力線の総数は \(N = Q/\varepsilon_0 = 4\pi k_0 Q\)。球面の半径 \(R\) には依存しない。この「総数は一定」という事実が、電場の逆二乗則 \(E \propto 1/R^2\) を導く鍵になる。

(2) 球面 S の面積

直感的理解

半径 \(R\) の球面は、同じ半径の円を「ぐるっと回転」させたものです。面積は半径の2乗に比例して \(4\pi R^2\) になります。半径が2倍になれば面積は4倍。電気力線の「密度」が \(1/4\) に薄まる理由がここにあります。

球面の面積の公式

半径 \(R\) の球面の表面積は:

$$ S = 4\pi R^2 $$
答え:\(S = 4\pi R^2\) [m²]
補足:なぜ球面の面積は \(4\pi R^2\) なのか

球面の面積は、積分で求めると次のようになります。球面上の微小面積要素を \(dS = R^2 \sin\theta\, d\theta\, d\phi\) として全体を積分すると:

$$ S = \int_0^{2\pi} \int_0^{\pi} R^2 \sin\theta\, d\theta\, d\phi = R^2 \cdot 2\pi \cdot 2 = 4\pi R^2 $$

直感的には、「半径 \(R\) の円の面積 \(\pi R^2\) のちょうど4倍」と覚えると便利です。

Point

球面の面積 \(S = 4\pi R^2\) は \(R^2\) に比例する。電気力線の総数 \(N\) が一定なのに面積が \(R^2\) で増えるから、単位面積あたりの電気力線数(=電場)は \(1/R^2\) に比例して減少する。

(3) 電場の強さ E

直感的理解

割り算をするだけです。「総本数 \(\div\) 面積 = 密度」。これは「ピザを何人で分けるか」と同じ発想です。電気力線の本数(ピザの枚数)は一定で、球面の面積(人数)が \(R^2\) に比例して増えるので、一人あたり(=単位面積あたり)は \(1/R^2\) で減ります。

Step 1:「電場=単位面積あたりの電気力線の本数」を使う

$$ E = \frac{N}{S} $$

Step 2:(1)と(2)の結果を代入

$$ E = \frac{4\pi k_0 Q}{4\pi R^2} $$

Step 3:\(4\pi\) を約分

$$ E = \frac{k_0 Q}{R^2} $$

これはまさに点電荷(または導体球外部)の電場の公式そのものです。

数値計算の確認:電気素量 \(e = 1.6 \times 10^{-19}\) C の電子が電位差 100 V で加速されると、運動エネルギーは \(eV = 1.6 \times 10^{-19} \times 100 = 1.6 \times 10^{-17}\) J = 100 eV です。

答え:\(\displaystyle E = \frac{k_0 Q}{R^2}\) [N/C]
補足:ガウスの法則との関係

この問題の解法は、実はガウスの法則を具体的に適用したものです。ガウスの法則は:

$$ \oint \vec{E} \cdot d\vec{S} = \frac{Q}{\varepsilon_0} $$

球対称なので \(E\) は球面上で一定、かつ法線方向に平行です。よって:

$$ E \cdot 4\pi R^2 = \frac{Q}{\varepsilon_0} = 4\pi k_0 Q $$ $$ E = \frac{k_0 Q}{R^2} $$

クーロンの法則から出発しても同じ結果になりますが、ガウスの法則を使うと球対称な問題は非常にすっきり解けます。

補足:導体球の外部と点電荷の電場が同じ理由

導体球の電荷は表面に均一に分布します。球の外部から見ると、この電荷分布がつくる電場は、全電荷が中心に集中した点電荷とまったく同じになります(ニュートンの殻定理の電磁気版)。

したがって \(E = k_0 Q / R^2\) は、点電荷の公式であると同時に、導体球外部の電場でもあります。

Point

電気力線の本数 \(N = 4\pi k_0 Q\)(電荷のみに依存)を球面の面積 \(S = 4\pi R^2\) で割ると \(4\pi\) が約分されて \(E = k_0 Q / R^2\) が導かれる。逆二乗則は「一定本数の電気力線が \(R^2\) に比例する面積に広がる」という幾何学的事実の帰結である。