類題1 帯電した小球のつりあい(クーロン力と糸の張力)

解法

直感的理解
同符号に帯電した2つの小球は互いに反発し合います。糸でつるされた小球が静止しているなら、張力・重力・静電気力の3力がつりあっているはず。まずは幾何学的な関係(三角形 OAB の形状)から糸の傾き \(\theta\) を確定し、つりあい式とクーロンの法則を連立して \(q\) を求めます。

上図のスライダーで角度 \(\theta\) を変えてみましょう。この問題では AB = \(\sqrt{2}\,l\) という条件から \(\theta = 45°\) と確定します。

幾何学的関係の確認

点 O から糸の長さ \(l\) で A, B がぶら下がり、AB 間の距離が \(\sqrt{2}\,l\) です。三角形 OAB について:

よって 三角形 OAB は O を直角とする直角二等辺三角形。糸が鉛直となす角は \(\theta = 45°\) です。

幾何学的結論: $$\angle AOB = 90°, \quad \theta = 45°, \quad r = \sqrt{2}\,l$$

三平方の定理 \(\text{OA}^2 + \text{OB}^2 = \text{AB}^2\) から直角二等辺三角形と見抜けるのがこの問題の鍵です。

3力のつりあいの立式

幾何の条件 \(\theta = 45°\) が得られたので、次に小球 A に働く3力(張力 T、重力 mg、クーロン力 F)を鉛直成分・水平成分に分解してつりあいを立てます。最後にクーロンの法則で F を \(q\) で表し、連立して \(q\) を求めます。

小球 A に働く力:

鉛直方向のつりあい

鉛直方向の成分について:

$$T\cos 45° = mg$$ $$T \cdot \frac{\sqrt{2}}{2} = mg$$ $$\therefore \; T = \sqrt{2}\,mg$$

水平方向のつりあい

水平方向の成分について:

$$T\sin 45° = F$$ $$\sqrt{2}\,mg \cdot \frac{\sqrt{2}}{2} = F$$ $$\therefore \; F = mg$$
💡 別解:tan を使う方法

水平成分と鉛直成分の比を取ると:

$$\frac{T\sin\theta}{T\cos\theta} = \frac{F}{mg}$$ $$\tan 45° = \frac{F}{mg}$$ $$F = mg \cdot \tan 45° = mg$$

張力 T を経由せず直接 F が求まります。

クーロンの法則の適用

A, B の電気量はともに \(q\)、距離 \(r = \sqrt{2}\,l\) なので:

$$F = \frac{kq^2}{r^2} = \frac{kq^2}{(\sqrt{2}\,l)^2} = \frac{kq^2}{2l^2}$$

水平方向のつりあい \(F = mg\) と組み合わせて:

$$\frac{kq^2}{2l^2} = mg$$ $$q^2 = \frac{2mgl^2}{k}$$ $$q = \pm\,l\sqrt{\frac{2mg}{k}}$$

電気量の大きさは正なので:

答え:
$$\boxed{q = l\sqrt{\frac{2mg}{k}}}$$
🔍 符号について

\(q^2\) から \(q\) を求めるとき \(\pm\) が出ますが、この問題では A, B が反発しているので同符号の電荷です。\(q > 0\) でも \(q < 0\) でも \(q^2\) は同じ値になるため、電気量の大きさとして \(q = l\sqrt{2mg/k}\) と答えます。

(正確には「\(q = \pm\,l\sqrt{2mg/k}\)(同符号)」と書いてもよい。)

🔬 発展:一般の角度 \(\theta\) の場合

糸が鉛直から角度 \(\theta\) 傾いている一般の場合:

  • AB 間距離:\(r = 2l\sin\theta\)
  • つりあい:\(F = mg\tan\theta\)
  • クーロンの法則:\(\dfrac{kq^2}{4l^2\sin^2\theta} = mg\tan\theta\)
$$q = 2l\sin\theta\sqrt{\frac{mg\tan\theta}{k}}$$

\(\theta = 45°\) を代入すると \(\sin 45° = \frac{\sqrt{2}}{2}\)、\(\tan 45° = 1\) なので:

$$q = 2l \cdot \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \sqrt{\frac{mg}{k}} = l\sqrt{\frac{2mg}{k}}$$

本問の答えと一致します。

🧮 具体的な数値で確認

糸の長さ \(l = 0.20\) m、小球の質量 \(m = 5.0 \times 10^{-3}\) kg、クーロンの比例定数 \(k = 9.0 \times 10^{9}\) N·m²/C²、重力加速度 \(g = 9.8\) m/s² として、電気量 \(q\) を求めてみましょう。

公式 \(q = l\sqrt{\dfrac{2mg}{k}}\) に数値を代入します。

まず根号の中身を計算します:

$$ \frac{2mg}{k} = \frac{2 \times 5.0 \times 10^{-3} \times 9.8}{9.0 \times 10^{9}} = \frac{9.8 \times 10^{-2}}{9.0 \times 10^{9}} $$ $$ = 1.09 \times 10^{-11} \text{ C}^2/\text{m}^2 $$

平方根をとると:

$$ \sqrt{\frac{2mg}{k}} = \sqrt{1.09 \times 10^{-11}} = 3.3 \times 10^{-6} \text{ C/m} $$

糸の長さ \(l = 0.20\) m を掛けて:

$$ q = 0.20 \times 3.3 \times 10^{-6} = 6.6 \times 10^{-7} \text{ C} \fallingdotseq 0.66 \text{ μC} $$

マイクロクーロン(μC)のオーダーの電気量で、静電気の実験で現れる典型的な大きさです。

Point

帯電体のつりあい問題の定石:(1) 幾何学的条件から角度と距離を確定、(2) 力のつりあい式で静電気力を求める、(3) クーロンの法則に代入して \(q\) を算出。この3ステップは入試頻出パターンです。