上図のスライダーで角度 \(\theta\) を変えてみましょう。この問題では AB = \(\sqrt{2}\,l\) という条件から \(\theta = 45°\) と確定します。
点 O から糸の長さ \(l\) で A, B がぶら下がり、AB 間の距離が \(\sqrt{2}\,l\) です。三角形 OAB について:
よって 三角形 OAB は O を直角とする直角二等辺三角形。糸が鉛直となす角は \(\theta = 45°\) です。
三平方の定理 \(\text{OA}^2 + \text{OB}^2 = \text{AB}^2\) から直角二等辺三角形と見抜けるのがこの問題の鍵です。
幾何の条件 \(\theta = 45°\) が得られたので、次に小球 A に働く3力(張力 T、重力 mg、クーロン力 F)を鉛直成分・水平成分に分解してつりあいを立てます。最後にクーロンの法則で F を \(q\) で表し、連立して \(q\) を求めます。
小球 A に働く力:
鉛直方向の成分について:
$$T\cos 45° = mg$$ $$T \cdot \frac{\sqrt{2}}{2} = mg$$ $$\therefore \; T = \sqrt{2}\,mg$$水平方向の成分について:
$$T\sin 45° = F$$ $$\sqrt{2}\,mg \cdot \frac{\sqrt{2}}{2} = F$$ $$\therefore \; F = mg$$水平成分と鉛直成分の比を取ると:
$$\frac{T\sin\theta}{T\cos\theta} = \frac{F}{mg}$$ $$\tan 45° = \frac{F}{mg}$$ $$F = mg \cdot \tan 45° = mg$$張力 T を経由せず直接 F が求まります。
A, B の電気量はともに \(q\)、距離 \(r = \sqrt{2}\,l\) なので:
$$F = \frac{kq^2}{r^2} = \frac{kq^2}{(\sqrt{2}\,l)^2} = \frac{kq^2}{2l^2}$$水平方向のつりあい \(F = mg\) と組み合わせて:
$$\frac{kq^2}{2l^2} = mg$$ $$q^2 = \frac{2mgl^2}{k}$$ $$q = \pm\,l\sqrt{\frac{2mg}{k}}$$電気量の大きさは正なので:
\(q^2\) から \(q\) を求めるとき \(\pm\) が出ますが、この問題では A, B が反発しているので同符号の電荷です。\(q > 0\) でも \(q < 0\) でも \(q^2\) は同じ値になるため、電気量の大きさとして \(q = l\sqrt{2mg/k}\) と答えます。
(正確には「\(q = \pm\,l\sqrt{2mg/k}\)(同符号)」と書いてもよい。)
糸が鉛直から角度 \(\theta\) 傾いている一般の場合:
\(\theta = 45°\) を代入すると \(\sin 45° = \frac{\sqrt{2}}{2}\)、\(\tan 45° = 1\) なので:
$$q = 2l \cdot \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \sqrt{\frac{mg}{k}} = l\sqrt{\frac{2mg}{k}}$$本問の答えと一致します。
糸の長さ \(l = 0.20\) m、小球の質量 \(m = 5.0 \times 10^{-3}\) kg、クーロンの比例定数 \(k = 9.0 \times 10^{9}\) N·m²/C²、重力加速度 \(g = 9.8\) m/s² として、電気量 \(q\) を求めてみましょう。
公式 \(q = l\sqrt{\dfrac{2mg}{k}}\) に数値を代入します。
まず根号の中身を計算します:
$$ \frac{2mg}{k} = \frac{2 \times 5.0 \times 10^{-3} \times 9.8}{9.0 \times 10^{9}} = \frac{9.8 \times 10^{-2}}{9.0 \times 10^{9}} $$ $$ = 1.09 \times 10^{-11} \text{ C}^2/\text{m}^2 $$平方根をとると:
$$ \sqrt{\frac{2mg}{k}} = \sqrt{1.09 \times 10^{-11}} = 3.3 \times 10^{-6} \text{ C/m} $$糸の長さ \(l = 0.20\) m を掛けて:
$$ q = 0.20 \times 3.3 \times 10^{-6} = 6.6 \times 10^{-7} \text{ C} \fallingdotseq 0.66 \text{ μC} $$マイクロクーロン(μC)のオーダーの電気量で、静電気の実験で現れる典型的な大きさです。
帯電体のつりあい問題の定石:(1) 幾何学的条件から角度と距離を確定、(2) 力のつりあい式で静電気力を求める、(3) クーロンの法則に代入して \(q\) を算出。この3ステップは入試頻出パターンです。