教科書(物理) 演習問題5:コンデンサーを含む直流回路

解法 (1)(2)(3):S₁ のみ閉じた場合

直感的理解

S₁ を閉じた直後、C₁ には電荷がないので電圧 0 V です。C₁ は「導線」と同じ扱いになり、電流は C₁ を通って最大値で流れます。時間が経つと C₁ が充電されて電流が減り、最終的に電流 0 で定常状態に到達します。定常状態では C₁ の分岐が断線と同じになるので、3.0 kΩ の抵抗を流れる電流も 0 になります。

(1) S₁ を閉じた直後の 3.0 kΩ の電流 \(I_1\)

閉じた直後、C₁ には電荷がなく電圧 0 V です。C₁ は短絡(導線)と同じ扱いになります。

C₁ が R = 3.0 kΩ に並列で、C₁ が短絡 → R の両端の電圧 = 0 V → 並列部分の合成抵抗 ≒ 0 Ω。

回路は 1.0 kΩ のみで電流が流れる状態です。しかし R の両端の電圧が 0 V なので:

$$\boldsymbol{I_1 = \frac{0}{3.0 \times 10^3} = 0 \, \text{A}}$$

...ではありません。回路構成をもう一度確認しましょう。

この回路では、電池 → 1.0 kΩ → R(3.0 kΩ) の直列経路に対して、C₁ は R と並列に接続されています。S₁ を閉じた直後、C₁(電圧 0)が R を短絡するため、合成抵抗は 1.0 kΩ + 0 = 1.0 kΩ です。

回路全体の電流は:

$$I_{\text{total}} = \frac{E}{1.0 \, \text{k}\Omega} = \frac{6.0}{1.0 \times 10^3} = 6.0 \times 10^{-3} \, \text{A} = 6.0 \, \text{mA}$$

この電流は分岐点で R と C₁ に分かれますが、C₁ が短絡しているので並列部分の電圧は 0 V です。

3.0 kΩ の抵抗を流れる電流は:

$$\boldsymbol{I_1 = \frac{V_{\text{parallel}}}{R} = \frac{0}{3.0 \times 10^3} = 0 \, \text{A}}$$

つまり S₁ を閉じた直後は C₁ がすべての電流を引き受け、R には電流が流れません。全電流 6.0 mA は C₁ の充電に使われます。

※ 回路の配置によっては、R が C₁ と並列ではなく直列(電池 → R → C₁ の経路で、1.0 kΩ は別の分岐)の場合もあります。その場合:

$$I_1 = \frac{E}{R + 1.0 \, \text{k}\Omega} = \frac{6.0}{4.0 \times 10^3} = 1.5 \times 10^{-3} \, \text{A} = 1.5 \, \text{mA}$$

(2) 十分時間が経過した後の 3.0 kΩ の電流 \(I_2\)

十分時間が経過すると、C₁ は完全に充電され、C₁ に電流が流れなくなります。C₁ の分岐は断線と同じです。

すると回路に電流を流す経路がなくなるため:

$$\boldsymbol{I_2 = 0 \, \text{A}}$$

(3) C₁ の電圧 \(V_1\) と電気量 \(Q_1\)

\(I_2 = 0\) なので、1.0 kΩ と R の電圧降下はともに 0 です。キルヒホッフの第2法則より:

$$E = V_{1.0\text{k}\Omega} + V_R + V_1 = 0 + 0 + V_1$$ $$\boldsymbol{V_1 = E = 6.0 \, \text{V}}$$

C₁ に蓄えられた電気量:

$$\boldsymbol{Q_1 = C_1 V_1 = 2.0 \times 10^{-6} \times 6.0 = 12 \times 10^{-6} \, \text{C} = 12 \, \mu\text{C}}$$
答え
(1) \(I_1 = 1.5 \times 10^{-3}\) A \(= 1.5\) mA
(2) \(I_2 = 0\) A
(3) \(V_1 = 6.0\) V, \(Q_1 = 12 \times 10^{-6}\) C \(= 12 \, \mu\)C
補足:S₁ を閉じた直後の考え方

コンデンサーは「電荷ゼロ → 電圧ゼロ」なので、閉じた瞬間は短絡(導線)と同じです。電流はコンデンサーに流れ込み、充電が始まります。

充電が進むにつれてコンデンサーの電圧が上昇し、電流は減少していきます。これは RC 回路の過渡現象で、時定数 \(\tau = RC\) 程度の時間で定常状態に近づきます。

Point

コンデンサーの2つの極限状態を使い分けましょう:閉じた直後は「短絡(電圧 0)」、十分時間後は「断線(電流 0)」。定常状態で電流が流れないなら、抵抗の電圧降下は 0 であり、電池の起電力がすべてコンデンサーにかかります。

解法 (4)(5):S₁ を開き S₂ を閉じた場合

直感的理解

S₁ を開くと電池が回路から切り離されます。C₁ に蓄えられた電荷 \(Q_1 = 12 \, \mu\)C は保存されたままです。次に S₂ を閉じると、C₁ と C₂ が接続され、C₁ の電荷が C₂ にも移動して再分配されます。最終的に C₁ と C₂ の電圧が等しくなったところで平衡に達します。電荷の総量は保存されます。

(4) C₁, C₂ の電気量 \(Q_1'\), \(Q_2'\)

S₁ を開いて電池を切り離した時点で、C₁ には \(Q_1 = 12 \, \mu\)C の電荷が蓄えられています。S₂ を閉じると C₁ と C₂ が接続されます。

十分時間が経過すると、C₁ と C₂ の電圧が等しくなります(\(V_1' = V_2' = V\))。

電荷保存則:電荷は外部に逃げないので、

$$Q_1' + Q_2' = Q_1 = 12 \, \mu\text{C}$$

電圧均等条件

$$\frac{Q_1'}{C_1} = \frac{Q_2'}{C_2} = V$$

これを解くと:

$$Q_1' = \frac{C_1}{C_1 + C_2} \times Q_1 = \frac{2.0}{2.0 + 3.0} \times 12 = \frac{2.0}{5.0} \times 12 = \boldsymbol{4.8 \, \mu\text{C}}$$ $$Q_2' = \frac{C_2}{C_1 + C_2} \times Q_1 = \frac{3.0}{5.0} \times 12 = \boldsymbol{7.2 \, \mu\text{C}}$$

共通電圧は:

$$V = \frac{Q_1'}{C_1} = \frac{4.8}{2.0} = 2.4 \, \text{V}$$

(5) S₂ を通過した電気量 \(Q\)

S₂ を閉じてから十分時間経過するまでに C₂ に蓄えられた電荷は、すべて S₂ を通って流れたものです:

$$\boldsymbol{Q = Q_2' = 7.2 \, \mu\text{C} = 7.2 \times 10^{-6} \, \text{C}}$$
答え
(4) \(Q_1' = 4.8 \times 10^{-6}\) C \(= 4.8 \, \mu\)C, \(Q_2' = 7.2 \times 10^{-6}\) C \(= 7.2 \, \mu\)C
(5) \(Q = 7.2 \times 10^{-6}\) C \(= 7.2 \, \mu\)C
別解:合成容量を使う方法

C₁ と C₂ が並列に接続されるので、合成容量は:

$$C = C_1 + C_2 = 2.0 + 3.0 = 5.0 \, \mu\text{F}$$

合成コンデンサーにかかる電圧 \(V\) は:

$$V = \frac{Q_1}{C} = \frac{12}{5.0} = 2.4 \, \text{V}$$

よって:

$$Q_1' = C_1 V = 2.0 \times 2.4 = 4.8 \, \mu\text{C}$$ $$Q_2' = C_2 V = 3.0 \times 2.4 = 7.2 \, \mu\text{C}$$
補足:エネルギーの散逸

電荷の再分配前後でエネルギーを比較してみましょう。

再分配前:

$$U_{\text{before}} = \frac{Q_1^2}{2C_1} = \frac{(12)^2}{2 \times 2.0} = 36 \, \mu\text{J}$$

再分配後:

$$U_{\text{after}} = \frac{Q_1'^2}{2C_1} + \frac{Q_2'^2}{2C_2} = \frac{(4.8)^2}{2 \times 2.0} + \frac{(7.2)^2}{2 \times 3.0} = 5.76 + 8.64 = 14.4 \, \mu\text{J}$$

差の \(36 - 14.4 = 21.6 \, \mu\)J は、接続導線の抵抗(微小でも 0 ではない)でジュール熱として散逸します。コンデンサー間の電荷再分配では、必ずエネルギーが失われます。

Point

コンデンサー間の電荷再分配では、(1) 電荷保存(\(Q_1' + Q_2' = Q_{\text{total}}\))と (2) 電圧均等(\(V_1' = V_2'\))の2条件を連立します。容量比で電荷が分配される点を押さえましょう。S₂ を通過する電気量は、C₂ に新たに蓄えられた電荷量に等しくなります。