定滑車は力の向きを変えるだけで大きさは変わりません。動滑車は2本の糸でおもりを支えるので、1本あたりの張力は半分になります。ただし、おもりを 1 m 持ち上げるには糸を 2 m 引かなければなりません。下のシミュレーションで糸を引っ張って確かめましょう。
重さ \(W = 4.0\,\text{N}\) のおもりを持ち上げる場面で、定滑車と動滑車を比較します。
定滑車は軸が固定されており、力の向きを変えるだけです。糸の張力はどこでも同じなので:
$$ F = W = 4.0\,\text{N} $$おもりを \(h = 0.50\,\text{m}\) 持ち上げるとき、糸を引く距離も \(0.50\,\text{m}\) です。
$$ W_{\text{仕事}} = F \times d = 4.0 \times 0.50 = 2.0\,\text{J} $$動滑車では2本の糸がおもり+滑車を支えます。糸の張力をそれぞれ \(T\) とすると:
$$ 2T = W \quad \Rightarrow \quad T = \frac{W}{2} = \frac{4.0}{2} = 2.0\,\text{N} $$ただし、おもりを \(h = 0.50\,\text{m}\) 持ち上げるには糸を \(2h = 1.0\,\text{m}\) 引く必要があります:
$$ W_{\text{仕事}} = T \times 2h = 2.0 \times 1.0 = 2.0\,\text{J} $$仕事はどちらも同じ 2.0 J です。力が半分になった分、距離が2倍になります。
動滑車が \(h\) だけ上がると、滑車の左右の糸がそれぞれ \(h\) ずつ短くなります。しかし糸は1本なので、その合計 \(2h\) だけ手元から引き出す必要があります。
これは仕事の原理の一例です:
$$ \text{(入力の仕事)} = \text{(出力の仕事)} $$ $$ F \times 2h = W \times h $$道具(滑車・てこ・斜面など)を使っても、仕事の総量は変わりません。力を小さくできる代わりに、距離が大きくなります。
動滑車を2つ組み合わせると、糸が4本でおもりを支えるため力は \(\dfrac{1}{4}\) になります。一般に \(n\) 本の糸で支えると:
$$ F = \frac{W}{n}, \quad d = nh $$クレーンや起重機では複数の滑車を組み合わせた複合滑車(滑車装置)を使い、数十トンの荷物を持ち上げています。
動滑車は力を半分にするが、引く距離は2倍になる。仕事の総量(力 × 距離)は道具を使っても変わりません(仕事の原理)。「楽をしているように見えても、エネルギー的には同じ」ということを意識しましょう。