教科書(物理基礎) 問39:静止摩擦力

解法

直感的理解
机の上の本を軽く押しても動かないのは、静止摩擦力が押す力とつりあっているからです。押す力を大きくすると摩擦力も大きくなりますが、最大静止摩擦力 \(f_0 = \mu_0 N\) を超えると物体は動き出します。スライダーで力を変え、静止摩擦力がどう変わるか確認しましょう。

解法

あらい水平面上に置かれた重さ \(W = 20\) N の物体を水平に引きます。静止摩擦係数 \(\mu_0 = 0.40\) とします。

(1) 5.0 N の力で引いたとき

まず最大静止摩擦力を求めます:

$$ f_0 = \mu_0 N = 0.40 \times 20 = 8.0\;\text{N} $$

外力 \(F = 5.0\) N \(< f_0 = 8.0\) N なので物体は静止。水平方向のつりあいより:

$$ f = F = 5.0\;\text{N} $$

(2) 静止摩擦力の性質

静止摩擦力は「受動的な力」であり、外力に応じて 0 から \(f_0\) まで変化します:

$$ 0 \leq f \leq f_0 = \mu_0 N $$

外力が最大静止摩擦力を超えると(\(F > f_0\))、物体はすべり出し、摩擦は動摩擦力 \(f' = \mu' N\) に切り替わります。一般に \(\mu' < \mu_0\) なので動摩擦力は最大静止摩擦力より小さくなります。

答え:(1) 静止摩擦力 \(f = 5.0\) N(外力とつりあう) (2) 最大静止摩擦力 \(f_0 = \mu_0 N = 8.0\) N
Point

静止摩擦力 \(\neq \mu_0 N\) です。\(\mu_0 N\) は最大値であり、外力が小さければ摩擦力もそれに合わせて小さくなります。「静止摩擦力 = 外力」(\(F \leq f_0\) のとき)を忘れないようにしましょう。

💡 静止摩擦力と動摩擦力の切り替わり

グラフで整理すると(シミュレーションのグラフを参照):

  • \(F \leq f_0\):静止状態。\(f = F\)(グラフは傾き1の直線)
  • \(F = f_0 = \mu_0 N\):すべり出す瞬間。\(f\) は最大値
  • \(F > f_0\):運動状態。\(f = \mu' N\)(一定値、\(\mu' < \mu_0\) なので摩擦力は少し小さくなる)

この「すべり出す瞬間に摩擦力が最大→やや減少」という現象が、重い家具を押し始める瞬間が最もつらく、動き出すと少し楽になる理由です。

🔍 なぜ静止摩擦力は「受動的」なのか

ばねの復元力や重力と違い、静止摩擦力は自分から積極的に力を出すわけではありません。外力がなければ摩擦力も 0 です。

ミクロに見ると、接触面の凹凸同士がかみ合って抵抗力を生み出しています。外力が小さいうちは凹凸の弾性変形で対抗し、限界を超えると凹凸が引きちぎれてすべり始めます。