あらい水平面上に置かれた重さ \(W = 20\) N の物体を水平に引きます。静止摩擦係数 \(\mu_0 = 0.40\) とします。
(1) 5.0 N の力で引いたとき
まず最大静止摩擦力を求めます:
$$ f_0 = \mu_0 N = 0.40 \times 20 = 8.0\;\text{N} $$外力 \(F = 5.0\) N \(< f_0 = 8.0\) N なので物体は静止。水平方向のつりあいより:
$$ f = F = 5.0\;\text{N} $$(2) 静止摩擦力の性質
静止摩擦力は「受動的な力」であり、外力に応じて 0 から \(f_0\) まで変化します:
$$ 0 \leq f \leq f_0 = \mu_0 N $$外力が最大静止摩擦力を超えると(\(F > f_0\))、物体はすべり出し、摩擦は動摩擦力 \(f' = \mu' N\) に切り替わります。一般に \(\mu' < \mu_0\) なので動摩擦力は最大静止摩擦力より小さくなります。
静止摩擦力 \(\neq \mu_0 N\) です。\(\mu_0 N\) は最大値であり、外力が小さければ摩擦力もそれに合わせて小さくなります。「静止摩擦力 = 外力」(\(F \leq f_0\) のとき)を忘れないようにしましょう。
グラフで整理すると(シミュレーションのグラフを参照):
この「すべり出す瞬間に摩擦力が最大→やや減少」という現象が、重い家具を押し始める瞬間が最もつらく、動き出すと少し楽になる理由です。
ばねの復元力や重力と違い、静止摩擦力は自分から積極的に力を出すわけではありません。外力がなければ摩擦力も 0 です。
ミクロに見ると、接触面の凹凸同士がかみ合って抵抗力を生み出しています。外力が小さいうちは凹凸の弾性変形で対抗し、限界を超えると凹凸が引きちぎれてすべり始めます。