教科書(物理基礎) 演習問題1:力のつりあい

解法の全体像

傾き角 \(\theta\) のなめらかな斜面上に質量 \(m\) の物体を置き、水平方向に力 \(F\) を加えて静止させます。斜面からの垂直抗力 \(N\) と合わせて、力のつりあいから \(F\) と \(N\) を求める問題です。

直感的理解
ポイントは「水平方向の力 \(F\) も斜面方向に分解する」ことです。重力だけでなく \(F\) も斜面に平行・垂直な成分を持ちます。2つの力を同時に分解して、斜面座標で力のつりあいを立てるのがコツです。

力の分解と式の立て方

\(mg\) と \(F\) をそれぞれ斜面に平行・垂直に分解します。

斜面に平行な方向(斜面下向きを正):

$$ mg\sin\theta = F\cos\theta $$

ここから:

$$ F = mg\tan\theta $$

斜面に垂直な方向(斜面から離れる方向を正):

$$ N = mg\cos\theta + F\sin\theta $$

\(F = mg\tan\theta\) を代入すると:

$$ N = mg\cos\theta + mg\tan\theta \cdot \sin\theta = mg\cos\theta + \frac{mg\sin^2\theta}{\cos\theta} = \frac{mg}{\cos\theta} $$

数値計算(\(\theta = 30°\), \(m = 2.0\;\text{kg}\))

$$ F = 2.0 \times 9.8 \times \tan 30° = 19.6 \times \frac{1}{\sqrt{3}} \fallingdotseq 11.3\;\text{N} $$ $$ N = \frac{2.0 \times 9.8}{\cos 30°} = \frac{19.6}{\frac{\sqrt{3}}{2}} = \frac{19.6 \times 2}{\sqrt{3}} \fallingdotseq 22.6\;\text{N} $$

力の分解シミュレーション

答え:\(F = mg\tan\theta\)、\(N = \dfrac{mg}{\cos\theta}\)。\(\theta = 30°\), \(m = 2.0\;\text{kg}\) のとき \(F \fallingdotseq 11.3\;\text{N}\)、\(N \fallingdotseq 22.6\;\text{N}\)

数値計算:2.0 × 9.8 = 19.6

数値計算:2.0 × 9.8 = 19.6

📌 ポイント

水平方向の力 \(F\) は斜面に平行な成分 \(F\cos\theta\) と垂直な成分 \(F\sin\theta\) を持ちます。2つの力を同時に斜面座標に分解するのがこの問題のカギです。

📐 別解:水平・鉛直方向で解く

斜面座標ではなく、水平・鉛直方向で力のつりあいを立てることもできます。

水平方向: \(F = N\sin\theta\)

鉛直方向: \(N\cos\theta = mg\)

鉛直方向から \(N = mg / \cos\theta\)、これを水平方向に代入して \(F = mg\tan\theta\)。同じ結果が得られます。

座標軸の選び方は自由ですが、「未知数が少ない方程式になる座標系」を選ぶと計算がラクです。

🤔 θ → 90° のとき何が起こる?

\(\theta \to 90°\) では \(\tan\theta \to \infty\)、つまり \(F \to \infty\) になります。垂直な壁に物体を水平力だけで押し付けて「静止」させるには無限の力が要る――なめらかな壁では摩擦力がないので滑り落ちてしまうからです。シミュレーションで θ を大きくして確かめてみましょう。