教科書(物理基礎) 演習問題4:静止摩擦力

解法の全体像

水平な粗い面に質量 \(m = 5.0\;\text{kg}\) の物体を置き、水平方向に力 \(F\) を徐々に大きくしていきます。\(F = 20\;\text{N}\) で動き出したとき、(1) 動き出す直前の最大静止摩擦力 \(f_0\)、(2) 静止摩擦係数 \(\mu\)、(3) \(F = 8.0\;\text{N}\) のときの静止摩擦力を求めます。

直感的理解
静止摩擦力は「受動的な力」です。加える力が小さいうちは、静止摩擦力も同じ大きさで抵抗します。力を増やしていくと、ある限界(最大静止摩擦力 \(f_0\))を超えた瞬間に物体が動き出します。この \(f_0\) と垂直抗力 \(N\) の比が静止摩擦係数 \(\mu\) です。

(1)最大静止摩擦力

動き出す直前、力のつりあいが成り立っています:

$$ f_0 = F = 20\;\text{N} $$

(2)静止摩擦係数

水平面上なので垂直抗力は:

$$ N = mg = 5.0 \times 9.8 = 49\;\text{N} $$

静止摩擦係数は:

$$ \mu = \frac{f_0}{N} = \frac{20}{49} \fallingdotseq 0.41 $$

(3)\(F = 8.0\;\text{N}\) のときの静止摩擦力

物体は静止しているので、静止摩擦力は加える力と同じ大きさ

$$ f = F = 8.0\;\text{N} $$

確認:\(f = 8.0\;\text{N} < f_0 = 20\;\text{N}\) なので、まだ動き出しません。

静止摩擦力のグラフシミュレーション

答え:(1) 最大静止摩擦力 \(f_0 = 20\;\text{N}\) (2) \(\mu = \dfrac{20}{49} \fallingdotseq 0.41\) (3) \(f = 8.0\;\text{N}\)

数値計算:計算すると 20 を得る。

数値計算:計算すると 20 を得る。

📌 ポイント

静止摩擦力は加える力に応じて変化します。\(f = F\)(つりあい)が成り立つのは \(F \leq f_0\) のときだけ。\(F > f_0\) で動き出すと、摩擦力は動摩擦力 \(f' = \mu' N\) に切り替わり、\(f_0\) より小さくなります。

💡 静止摩擦力のグラフの読み方

シミュレーション下部のグラフに注目してください。加える力 \(F\) を横軸、摩擦力 \(f\) を縦軸にとると:

  • 静止領域(\(F \leq f_0\)):\(f = F\) なので傾き 45° の直線
  • 動摩擦領域(\(F > f_0\)):\(f = \mu' N\) の一定値に落ちる

\(f_0\) の点で不連続に下がるのが特徴です。これが「動き出す瞬間にガクッと力が緩む」感覚の正体です。

🔬 発展:なぜ静止摩擦力 > 動摩擦力なのか

ミクロに見ると、静止している物体の接触面は微小な凹凸がかみ合って「溶着」しています。動き出すにはこの溶着を破壊する必要があり、大きな力が要ります。

一方、動いている状態では新しい溶着が形成される前に面が滑っていくので、必要な力が小さくなります。一般に \(\mu' < \mu\)(動摩擦係数 < 静止摩擦係数)が成り立ちます。