教科書(物理基礎) 演習問題2:縦波

解法の全体像

直感的理解
縦波は音波のように媒質が進行方向に沿って前後に振動する波です。目に見えにくいので、変位を90度回転させて「横波のグラフ」として描きます。このとき、グラフの $y$ 値は「右向きのずれ」を表しています。ある点の左側が右にずれ、右側が左にずれていれば、粒子がその点に集まる(密になる)のです。

この問題は、縦波(疎密波)の変位を横波のグラフ($y$-$x$ グラフ)で表したとき、 最も「密」な点をどのように見分けるかを問うものです。

縦波と横波表示の対応(シミュレーション)

上段に $y$-$x$ グラフ(横波表示)、下段に実際の縦波(媒質粒子の配置)を表示しています。 密な領域は、疎な領域はで色分けしています。 スライダーやボタンで時刻を変えると、波形の移動と密・疎の変化が確認できます。

Point

縦波の横波表示では、$y > 0$ は右方向への変位、$y < 0$ は左方向への変位を意味する。密・疎はグラフの傾きで判定する。

(1) 時刻 $t = 0$ s における最も密な点

波長の確認

まず波長を確認します。図より、B は波が $y = 0$ を上向きに横切る点(上昇ゼロクロス)、D は $y = 0$ を下向きに横切る点(下降ゼロクロス)です。B と D の間にはちょうどピーク(山)が 1 つあるので、 $$\text{BD} = \frac{\lambda}{2}$$ これより、 $$\lambda = 2 \times 0.40 = 0.80 \text{ m}$$

密の判定方法

横波表示のグラフにおいて、「密」は $y$-$x$ グラフの傾き $\dfrac{\partial y}{\partial x}$ が最も負(右下がりが最も急)な位置に対応します。

直感的な理解:ある点 P の左側の粒子が $y > 0$(右に変位)、右側の粒子が $y < 0$(左に変位)であれば、両側から粒子が P に向かって集まり、になります。このとき、P 付近のグラフは右下がりです。

各点の判定($t = 0$ s)

直感的理解
D の位置では、左隣の粒子 C が右方向に変位($y > 0$)し、右隣の粒子 E が左方向に変位($y < 0$)しています。つまり両側から粒子が D に向かって集まっているので、D が最も密になります。これはグラフが「右下がり」であることと対応しています。

時刻 $t = 0$ s における各点の変位と傾きを確認すると、

D の左隣(C 側)の粒子は $y > 0$ なので右に変位し、D の右隣(E 側)の粒子は $y < 0$ なので左に変位しています。 つまり、D に向かって両側から粒子が集まるため、D が最も密です。

答え (1):
$t = 0$ s で最も密な点は D
Point

密の判定:横波表示で傾きが最も急な右下がり($\partial y / \partial x$ が最も負)の位置が「最も密」。ピークやトラフは傾きゼロなので密でも疎でもない。

(2) 時刻 $t = 0.10$ s における最も密な点

波の移動量を求める

波の速さ $v = 2.0$ m/s、経過時間 $\Delta t = 0.10$ s なので、波が移動する距離は $$\Delta x = v \cdot \Delta t = 2.0 \times 0.10 = 0.20 \text{ m}$$

波長 $\lambda = 0.80$ m より、$\frac{\lambda}{4} = 0.20$ m なので、 波形全体が $+x$ 方向に $\dfrac{\lambda}{4}$ だけ移動します。

移動後の密の位置

直感的理解
波が $+x$ 方向に進むと、密・疎の位置も同じ方向に同じ速さで移動します。$\Delta t = 0.10$ s で波は $\lambda/4 = 0.20$ m だけ右に進むので、もともと D にあった密は E へ、O にあった密は A へ移ります。密の位置は「波と一緒に動く」と考えると直感的に分かりやすいです。

$t = 0$ s で D(下降ゼロクロス)にあった「密」は、$\frac{\lambda}{4} = 0.20$ m だけ右に移動します。 $$x_\text{D} + 0.20 = \lambda + \frac{\lambda}{4} = \frac{5\lambda}{4}$$ $\frac{5\lambda}{4}$ の位置は E です。

同様に、$t = 0$ s で O(原点)にも下降ゼロクロスがあり、その密も $\frac{\lambda}{4}$ だけ右に移動して A の位置に来ます。 $$x_\text{O} + 0.20 = 0 + \frac{\lambda}{4} = \frac{\lambda}{4} = x_\text{A}$$

上の図で、破線($t = 0$)から実線($t = 0.10$ s)へ波形が $\frac{\lambda}{4}$ だけ右に移動しています。

$t = 0.10$ s での各点の状態を整理すると:

答え (2):
$t = 0.10$ s で最も密な点は A, E
💡 補足:波の重ね合わせの原理

2つ以上の波が出会うとき、各点の変位はそれぞれの波の変位の和になります(重ね合わせの原理)。

数値計算:2 × 0.40 = 0.800

数値計算:2 × 0.40 = 0.800

Point

波の進行と密・疎の移動:波が $+x$ 方向に速さ $v$ で進むとき、密・疎の位置も $v \Delta t$ だけ同じ方向に移動する。波長の求め方は、異種ゼロクロス間(上昇→下降)が $\lambda/2$。