教科書(物理基礎) 問15:送電と電力損失

解法

直感的理解
送電線にも電気抵抗があるので,電流が流れるとジュール熱で電力が失われます。同じ電力を送るとき,電圧を2倍に上げれば電流は半分になり,\(I^2 r\) の損失は \(1/4\) に激減します。だから発電所では何十万 V もの高電圧で送電するのです。

送電電圧と線路抵抗のスライダーを操作してください。電圧を上げると電流が減り,送電線でのジュール熱損失が激減する様子がバーグラフでわかります。赤いほど損失が大きく,熱の発生を示しています。

送電線の電力損失

送電する電力 \(P\) [W],送電電圧 \(V\) [V],送電線の抵抗 \(r\) [Ω] とすると,送電線に流れる電流は

$$ I = \frac{P}{V} $$

送電線での電力損失は

$$ P_{\text{loss}} = I^2 r = \frac{P^2 r}{V^2} $$

つまり送電電圧 \(V\) を \(n\) 倍にすると,電力損失は \(\frac{1}{n^2}\) 倍になります。

具体的な計算例

\(P = 1000\) W を送電線(\(r = 5.0\) Ω)で送るとき:

① \(V = 100\) V で送電:

$$ I = \frac{1000}{100} = 10 \text{ A}, \quad P_{\text{loss}} = 10^2 \times 5.0 = 500 \text{ W}(損失率 50%)$$

② \(V = 1000\) V で送電:

$$ I = \frac{1000}{1000} = 1.0 \text{ A}, \quad P_{\text{loss}} = 1.0^2 \times 5.0 = 5.0 \text{ W}(損失率 0.5%)$$

電圧を10倍にしただけで損失は \(1/100\) に激減します。

答え:
高電圧で送電すると電流が減り,\(I^2 r\) の損失が小さくなる。100 V→1000 V(10倍)にすると損失は 500 W→5.0 W(1/100)に減少。
補足:日本の送電システム

実際の送電では以下のように電圧を変えて送電しています。

  • 発電所の出力:約 20,000 V(2万V)
  • 送電線:275,000〜500,000 V(27.5万〜50万V)に昇圧
  • 変電所で段階的に降圧:66,000 V → 6,600 V → 200/100 V

50万 V で送電すると,100 V と比べて電力損失は \((100/500000)^2 = 4 \times 10^{-8}\) 倍(ほぼゼロ)になります。

Point

\(P_{\text{loss}} = P^2 r / V^2\) なので,送電電圧を \(n\) 倍にすると損失は \(1/n^2\) 倍。これが高電圧送電の理由であり,変圧器(交流専用)が不可欠な技術です。