ボールを落とすと、跳ね返った高さはもとより低くなります。ではどれだけ低くなるのかを、毎回計算せずに一言で言えるでしょうか。このページでは、反発係数 \(e\) だけで跳ね返りの高さが決まることを、落下・衝突・上昇の 3 段階に分けて導きます。
下の図では、高さ \(h\) から静かに落としたボールが床で跳ね返り、\(h'\) まで上がるようすを見られます。落とす高さと反発係数を変えて、跳ね返りの高さがどう変わるか試してください。ドラッグで視点を回せます(ダブルクリックで元に戻ります)。
ボールを落として跳ね返らせたとき、跳ね返ったあとの高さを毎回計算していませんか。
じつは、跳ね返ったあとの高さ \(h'\) は、もとの高さ \(h\) の \(e^2\) 倍になります。
この式を、これから 3 段階で導いていきます。
使う考え方:反発係数・力学・自由落下・等加速度直線運動
ここからが本題です。求める道すじは 3 段階あります。まず落ちるまでを等加速度直線運動として解いて、床にぶつかる直前の速さを出します。次に跳ね返ったあとを同じ公式で解いて、最高点の高さを速さで表します。最後に、その 2 本の式をつなぎます。
まずは落ちるまで。床にぶつかる直前の速さを求めます。
空気抵抗は考えないことにします。すると落下は等加速度直線運動になります。
向きの約束が要ります。ここでは落ちる向きを正にとります。
使う公式はこれです。
$$ v^2 - v_0{}^2 = 2ax $$
ここに 1 つずつ入れていきます。求める速さは、床にぶつかる直前の速さ \(v_y\) です。
そっと手を離すだけなので、はじめの速さ \(v_0\) は 0 です。
加速度 \(a\) は重力加速度 \(g\)、進んだ距離 \(x\) は落とす高さ \(h\) です。
4 つとも入れると、こうなります。
$$ v_y{}^2 - 0 = 2gh $$
0 を消さずに残すと、引き算がどこへ行ったのかが見えます。
整理すると、床にぶつかる直前の速さが求まりました。これを①式とします。
$$ v_y{}^2 = 2gh \qquad \cdots\cdots \text{①} $$
次は、跳ね返ったあとを見ます。
跳ね返った直後の速さを考えます。
これを \(v_y{}'\) とおきます。まだ数は分かりませんが、名前があれば式は立てられます。
跳ね返って上がる、その最高点の高さを \(h'\) とします。
今度は上りなので、上向きを正にとり直します。使う公式はさっきと同じ \(v^2 - v_0{}^2 = 2ax\) です。
最高点では速さが 0、はじめの速さは \(v_y{}'\)、加速度は下向きなので \(-g\)、進んだ距離は \(h'\) です。
入れると、こうなります。
$$ 0 - v_y{}'^2 = 2(-g)\,h' $$
整理すると、最高点の高さが速さで書けました。これを②式とします。
$$ h' = \dfrac{v_y{}'^2}{2g} \qquad \cdots\cdots \text{②} $$
ここまでで式が 2 本そろいました。ここで反発係数の出番です。
反発係数 \(e\) は「ぶつかった瞬間に速さが何倍になるか」を表す数でした。だから跳ね返った直後の速さは \(e\,v_y\)、つまり \(v_y{}' = e\,v_y\) です。
①式は \(v_y\) の式、②式は \(v_y{}'\) の式。この関係があれば、2 本の式をつなげます。
\(v_y{}' = e\,v_y\) の両辺を 2 乗します。
$$ v_y{}'^2 = e^2 v_y{}^2 $$
右辺の \(v_y{}^2\) は①式で求めてあります。ここに①式を代入します。
$$ v_y{}'^2 = e^2 \cdot 2gh $$
これを②式に代入します。
$$ h' = \frac{e^2 \cdot 2gh}{2g} $$
分母と分子の \(2g\) が約分できて、答えが出ます。
$$ h' = e^2 h $$
1 回跳ねるごとに \(e^2\) 倍になるので、\(n\) 回跳ねたあとの高さは\(\left(e^2\right)^{n}\) 倍です。
たとえば \(e = 0.5\) なら、1 回で \(\dfrac14\)、2 回で \(\dfrac{1}{16}\) になります。
跳ね返るたびに、高さは急に低くなっていきます。
跳ね返りの高さを聞かれたら、\(h' = e^2 h\) の 1 本で答えられます。