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台が動くと登れる高さは半分

🎯 1. この解説でわかること

なめらかな床の上に、なめらかな曲面をもつ台が置いてあります。そこへ物体が勢いよく乗り上げると、物体は曲面を登っていきます。台を床に固定してあれば、登れる高さは \(\dfrac{v_0{}^{2}}{2g}\) の 1 本で決まります。では、台が自由に動けるときはどうなるでしょうか。答えの数値そのものより、なぜ固定した台と同じにならないのかが要になります。このページでは、まず水平方向の運動量保存で「最高点での速度」を押さえ、そのうえで力学的エネルギー保存を立てて、登れる高さを求めます。

下の図は「動く台を登る」の場面から始まります。図の上の帯に、物体と台の質量、はじめの速さが出ています。青い \(m\) が物体、オレンジの \(M\) が台、赤い矢印がそれぞれの速度です。物体の矢印は登るほど短くなり、台の矢印は逆に伸びていきます。最高点で 2 本の長さがそろうところを見てください。これが「2 つが同じ速度になる」ということです。「重心を見る」を押すと、紫の重心の印と矢印が出ます。乗り上げる前から最高点まで、この矢印の長さは変わりません。水平方向に外から力がはたらいていないからです。重心を見ているあいだは速度の赤い矢印が消えるので、もう一度押すと元に戻ります。「⏸ 一時停止」で止められ、「⟲ 最初から」で頭に戻せます。ボタンで切り替えられる「板の上を歩く」は、同じ「重心は勝手に動かない」という見方を氷の上の板で確かめる場面です(「変位を見る」はそちらの場面用のものさしです)。

なめらかな床の上に、なめらかな曲面をもつ台が置いてあります。そこへ質量 \(m = 1.0\ \text{kg}\) の物体が、\(v_0 = 7.0\ \text{m/s}\) で乗り上げます。台の質量も \(M = 1.0\ \text{kg}\) です。摩擦も空気抵抗も考えません。

もし台を床に固定してしまえば、あとはただ曲面を登るだけです。力学的エネルギー保存から、登れる高さは次のようになります。$$ \frac{v_0{}^{2}}{2g} = \frac{7.0^{2}}{2 \times 9.8} = 2.5\ \text{m} $$

では、台が床の上を自由に動けるときはどうでしょうか。台は固定されていないので、物体に押されて右へすべり出してしまいます。

答えは、固定したときのちょうど半分の \(1.25\ \text{m}\) です。

理由は、最高点でも物体と台がまだ動いているからです。2 つは同じ速度 \(3.5\ \text{m/s}\) で並んで進んでいます。

この「並んで進む」ぶんの運動エネルギーは、どうやっても高さには変えられません。登れる高さがその分だけ減る、というのがこの問題の正体です。

使う考え方:運動量保存・エネルギー保存・重心・力学・2体問題

📐 2. 解説

ここからが本題です。求める道すじは 2 段階あります。まず最高点がどういう瞬間かを決めて、水平方向の運動量保存から、そのときの速度を出します。次に力学的エネルギー保存を立て、はじめの運動エネルギーのうち高さに変わらずに残る分を差し引いて、登れる高さを求めます。鍵になるのは、最高点でも物体と台が止まっていないことです。

① 最高点の速さ

① 最高点の速さの場面

まず、最高点とはどういう瞬間かをはっきりさせます。物体が登りきった瞬間とは、物体が台に対して止まる瞬間のことです。台から見て物体がまだ上へ動いていれば、まだ登れるはずだからです。

ここが要です。台の上で止まって見えるということは、地面から見れば物体と台が同じ速度で並んで動いているということです。この共通の速度を \(V\) とおきます。

床はなめらかなので、水平方向には外から力がはたらきません。だから水平方向の運動量が保存します。はじめは物体だけが \(v_0\) で動き、最高点では 2 つが \(V\) で動くので

$$ m v_0 = (m + M)\,V $$

数を入れると

$$ 1.0 \times 7.0 = 2.0 \times V $$

これを解くと、共通の速度が求まります。

$$ V = \frac{1.0 \times 7.0}{2.0} = 3.5\ \text{m/s} $$

最高点でも、物体と台はこの速さで動き続けています。

$$ V = 3.5\ \text{m/s} $$

② 高さを出す

② 高さを出すの場面

速度が分かったので、次は力学的エネルギー保存です。曲面も床もなめらかなので、摩擦で熱に逃げる分はありません。

はじめに物体がもっていた運動エネルギーは

$$ \frac12 m v_0{}^{2} = \frac12 \times 1.0 \times 7.0^{2} = 24.5\ \text{J} $$

最高点では、物体と台が合わせて \(2.0\ \text{kg}\)、速さ \(3.5\ \text{m/s}\) で動いています。このぶんは運動エネルギーのまま残ってしまいます。

$$ \frac12 (m + M)\,V^{2} = \frac12 \times 2.0 \times 3.5^{2} = 12.25\ \text{J} $$

高さに変わったのは、その差の \(24.5 - 12.25 = 12.25\ \text{J}\) です。登れる高さを \(h\) とおくと、これが位置エネルギー \(mgh\) にあたるので

$$ 1.0 \times 9.8 \times h = 12.25 $$

したがって、登れる高さは次のように決まります。

$$ h = \frac{12.25}{9.8} = 1.25\ \text{m} $$

台を固定したときの \(2.5\ \text{m}\) の、ちょうど半分になりました。

$$ h = 1.25\ \text{m} $$

🔑 3. まとめ

台が床に固定されているかどうかだけで、登れる高さが 2 倍変わりました。「なめらかな床の上に置かれた台」という一言を読み落とすと、答えを間違えます。

固定か、動くかの場面

動く台のときの決め手は、最高点で物体と台が同じ速度になることでした。そこから運動量保存で速度を出し、エネルギー保存につなぎます。

一般に、質量 \(m\) の物体が質量 \(M\) の台へ \(v_0\) で乗り上げるとき、登れる高さは次のようになります。

$$ h = \frac{M}{m + M} \cdot \frac{v_0{}^{2}}{2g} $$

台を固定したときの高さに \(\dfrac{M}{m + M}\) を掛けた形です。

いまは \(m = M\) だったので \(\dfrac{M}{m + M} = \dfrac12\)、つまりちょうど半分でした。台がうんと重ければ \(\dfrac{M}{m + M}\) は 1 に近づき、固定した台と同じ結果に戻ります。