ばね振り子を大きく振らせれば、そのぶん大きなエネルギーをもっています。では振幅を 2 倍にしたら、エネルギーは何倍になるでしょうか。「2 倍」と答えたくなりますが、そうではありません。しかも、それだけ大きく振れているのに、1 往復にかかる時間はまったく変わりません。このページでは、振動の端の瞬間だけを見ることで単振動のエネルギーの式を導き、そのうえで、周期が振幅によらない理由を確かめます。
下の図では、質量 \(m\) とばね定数 \(k\) がまったく同じばね振り子を、横に置いた場合と縦につるした場合で並べて動かしています。縦のほうには、ばねの自然長とつりあいの位置を示す破線が引いてあります。つりあいの位置が、そのまま振動の中心です。「エネルギー」を押すと、弾性・運動・合計の 3 本の帯が出ます。「⏸ 一時停止」で端と中心それぞれの瞬間を止めて、弾性と運動が入れ替わっても合計だけは動かないことを確かめてください。「速さを見る」を押すと速度 \(v\) の矢印が出ます。端では矢印が消え、中心でいちばん長くなります。「力を見る」を押すと重力 \(mg\) とばねの力 \(k(x_0+x)\) の矢印が出て、縦につるしたときに振動の中心が自然長より \(\dfrac{mg}{k}\) だけ下がっていることも、札で示されます。質量 \(m\) とばね定数 \(k\) のスライダーを動かすと、振動の速さが変わります。\(m\) を重くすればゆっくり、\(k\) を大きくすれば速くなります。このとき縦と横はいつまでも歩調がそろったままで、周期がどちらも同じであることが目で見えます。なお、この図では振幅は固定してあります。振幅が効くのはエネルギーのほうで、周期には効かない、というのがこの回の話です。
ばね振り子を、いまの2 倍の振幅で振らせます。振幅 \(A\) は、振動の中心から端までの長さです。
このとき、ばね振り子がもつエネルギー \(E\) も 2 倍になるでしょうか。
いいえ、4 倍です。
エネルギーは振幅の 2 乗で効きます。ばね振り子のもつエネルギーは \(E = \dfrac{1}{2}kA^{2}\) で、\(A\) が 2 乗で入っています。だから \(A\) を 2 倍にすると、\(E\) は \(2^{2} = 4\) 倍になります。
しかも周期は変わりません。倍の振幅で振らせても、1 往復にかかる時間はまったく同じです。
往復する道のりが 2 倍になったのに、かかる時間は同じ。つまり速さのほうが 2 倍になっているということです。
使う考え方:単振動・ばね振り子・力学・エネルギー
ここからが本題です。確かめることは 2 つあります。1 つめはなぜ 2 乗で効くのか。振動の端では速さが 0 になることを使うと、エネルギーの式が 1 行で出ます。2 つめはなぜ周期は変わらないのか。周期の式に振幅が現れないことを確かめ、それを「動く道のりと速さが同じ割合で増える」という形で読み直します。
なぜ 2 乗で効くのかを見ます。手がかりは振動の端の瞬間です。
端まで来たおもりは、そこでいったん止まって向きを変えます。摩擦や空気抵抗は考えないので、力学的エネルギーは保存します。速さが \(v = 0\) なので運動エネルギーは 0 で、このときのエネルギーは弾性エネルギーだけになります。
ばねの弾性エネルギーは \(\dfrac{1}{2}kx^{2}\) です。ここで \(x\) は振動の中心からの変位で、端ではその \(x\) がちょうど振幅 \(A\) に等しくなります。
そこで \(x\) に \(A\) を入れると、単振動のエネルギーの式 \(E = \dfrac{1}{2}kA^{2}\) が求まります。
\(A\) が 2 乗で入っているので、振幅を 2 倍にするとエネルギーは 4 倍、3 倍にすれば 9 倍になります。
$$ E = \dfrac12 kA^{2} $$
では、振幅を変えても周期が変わらないのはなぜでしょうか。
ばね振り子の周期は、質量 \(m\) とばね定数 \(k\) だけで決まります。
$$ T = 2\pi\sqrt{\frac{m}{k}} $$
この式に振幅 \(A\) はどこにも入っていません。だから振幅をいくら変えても、\(T\) の値は変わりません。
理由は速さにあります。振幅を 2 倍にすると 1 往復で動く道のりも 2 倍になりますが、同時に最大の速さも 2 倍になります。
$$ v_{\max} = A\sqrt{\frac{k}{m}} $$
道のりと速さが同じ割合で増えるので、往復にかかる時間はつりあうのです。
振幅によらず周期が一定になるこの性質を等時性といいます。振り子時計が正確に時を刻めるのも、これがあるからです。ただし単振り子の等時性は、振れ角が小さくて \(\sin\theta \fallingdotseq \theta\) とみなせるときに成り立つ近似で、ばね振り子のようにどんな振幅でも厳密に成り立つわけではありません。
最後に、振幅を 2 倍にすると何がどう変わるのかを、エネルギー・最大の速さ・周期の 3 つで並べて確かめます。振幅が効くものと効かないものを分けて覚えるのが、この単元のこつです。
まとめます。単振動のエネルギーは振幅の 2 乗に比例します。
$$ E = \frac{1}{2}kA^{2} $$
いっぽう周期は振幅によりません。決めているのは \(m\) と \(k\) だけです。
だから振幅を 2 倍にすると、エネルギーは 4 倍、最大の速さは 2 倍、周期はそのままになります。振幅を 3 倍にすれば、エネルギーは 9 倍です。
\(A\) 2 倍 → \(E\) 4 倍、\(T\) 同じ