単振動しているおもりが、振動の中心から振幅の半分のところまで来ました。このとき速さは、最大の何割まで残っているでしょうか。「距離が半分だから、速さも半分」と答えたくなりますが、実際はかなり違います。このページでは、振幅を \(A\)、中心からの距離を \(x\) として、途中の速さを表す式を力学的エネルギー保存だけから導きます。そこに \(x = \dfrac{A}{2}\) を入れて、答えがどこから出てくるのかを確かめます。
下の図では、同じ質量・同じばね定数のばね振り子を、縦につるした場合と横に置いた場合で並べて動かしています。縦の側には自然長の線とつりあいの線が引いてあります。質量を \(m\)、ばね定数を \(k\)、重力加速度を \(g\) とすると、重力は振動の中心を \(\dfrac{mg}{k}\) だけ下へずらすだけなので、振動そのものは横と同じです(「力を見る」を押すと、この \(\dfrac{mg}{k}\) が図にも出ます)。「速さを見る」を押して、赤い矢印が中心でいちばん長く、両端で 0 になることを確かめてください。「エネルギー」を押すと弾性・運動・合計の帯が出て、端では全部が弾性、中心では全部が運動に移ります(帯に出るのは横の側の値です。縦でも、つりあいから測れば同じ形になります)。質量とばね定数のスライダーを動かすと周期は変わりますが、「振幅の半分で 87 %」という割合は、質量にもばね定数にも振幅にもよりません。
ばねにつないだおもりが、振幅 \(A = 0.20\ \text{m}\) で単振動しています。中心から左右へ \(0.20\ \text{m}\) ずつ、同じ振れ幅で行き来する運動です。
速さは場所によって変わります。中心(つりあいの位置)を通るときがいちばん速く、このときの速さを \(v_{\max}\) と書きます。両端では速さは 0 です。
では、中心から振幅の半分、つまり \(x = 0.10\ \text{m}\) のところまで来たとき、速さも半分になっているでしょうか。
いいえ。速さは最大の 87 %、つまり \(v = 0.87\,v_{\max}\) です。
落ちたのはたった 13 % で、まだ 9 割近い速さが残っています。
速さががくんと落ちるのは端のすぐ近くだけです。なぜそうなるのかを、これから力学的エネルギー保存から導きます。
使う考え方:単振動・ばね振り子・力学・エネルギー保存
ここからが本題です。2 段階で進みます。まず、ばねの弾性エネルギーと運動エネルギーの和が変わらないことだけを使って、どの位置でも使える速さの式を作ります。次に、その式に \(x = \dfrac{A}{2}\) を入れて、87 % という数がどこから出てくるのかを確かめます。
ここからは、途中の速さを求める式を作ります。運動方程式を解く必要はなく、力学的エネルギー保存だけで出せます。
端(\(x = \pm A\))では速さが 0 なので、エネルギーはすべて弾性エネルギーです。
$$ E = \frac12 kA^{2} $$
\(k\) はばね定数です。この \(E\) は、おもりがどこにいても変わりません。
途中の位置 \(x\) では、同じエネルギーが弾性 \(\dfrac12 kx^{2}\) と運動 \(\dfrac12 mv^{2}\) に分かれています。\(m\) はおもりの質量、\(v\) がいま求めたい速さです。
この 2 つの和が、端でのエネルギー \(E\) に等しくなります。
$$ \frac12 kx^{2} + \frac12 mv^{2} = \frac12 kA^{2} $$
両辺を 2 倍して \(kx^{2}\) を右辺へ移すと、こうなります。
$$ mv^{2} = k\left(A^{2} - x^{2}\right) $$
両辺を \(m\) で割ります。
$$ v^{2} = \frac{k}{m}\left(A^{2} - x^{2}\right) $$
ばね振り子の角振動数は \(\omega = \sqrt{k/m}\)、つまり \(\dfrac{k}{m} = \omega^{2}\) でした。これを使って両辺の平方根をとると、どの位置でも使える速さの式が出ます。
$$ v = \omega\sqrt{A^2 - x^2} $$
できた式に、\(x = \dfrac{A}{2}\) を入れてみます。
$$ v = \omega\sqrt{A^{2} - \left(\frac{A}{2}\right)^{2}} $$
ルートの中を計算します。\(\dfrac{A}{2}\) を 2 乗すると \(\dfrac{A^{2}}{4}\) なので、
$$ A^{2} - \frac{A^{2}}{4} = \frac{3}{4}A^{2} $$
引かれたのは4 分の 1 だけで、4 分の 3 が残ります。
ルートを取ります。
$$ \sqrt{\frac{3}{4}}\,A = \frac{\sqrt{3}}{2}A $$
\(\sqrt{3} \fallingdotseq 1.73\) なので、\(\dfrac{\sqrt{3}}{2} \fallingdotseq 0.87\)。つまり \(\sqrt{A^{2} - x^{2}} \fallingdotseq 0.87A\) です。
この式に \(x = 0\) を入れると、中心での速さ、つまり最大の速さが \(v_{\max} = \omega A\) と分かります。いま求めた速さは \(\omega\) に \(0.87A\) を掛けたものなので、
$$ v \fallingdotseq 0.87\,\omega A = 0.87\,v_{\max} $$
半分まで来ても、速さは最大の 87 % 残っているということです。
$$ v = 0.87\, v_{\max} $$
速さは、中心からの距離に比例して減るわけではありません。距離が半分になっても、速さは半分にはならないということです。
理由はルートの中にあります。引かれるのは \(x\) ではなく \(x^{2}\) です。\(x\) が \(A\) の半分でも \(x^{2}\) は \(A^{2}\) の 4 分の 1 にしかならないので、ルートの中には \(A^{2}\) の 4 分の 3 が残ります。
だから \(x = \dfrac{A}{2}\) でも \(0.87\,v_{\max}\)。ちなみに速さがちょうど半分になるのは \(x \fallingdotseq 0.87A\) の位置で、速さと位置で 87 という数が入れ替わります。
\(x = 0.9A\) で 44 %、\(x = 0.99A\) で 14 %。速さががくんと落ちるのは、端のすぐ手前だけです。途中の速さを聞かれたら、この 1 本で答えられます。
$$ v = \omega\sqrt{A^{2} - x^{2}} $$
\(x = \dfrac{A}{2}\) → \(0.87\,v_{\max}\)