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くっつく衝突で半分が熱になる

🎯 1. この解説でわかること

粘土玉を別の粘土玉にぶつけると、2 つはくっついて 1 つの塊になります。このとき運動量は保存します。では、運動エネルギーはどうなるでしょうか。運動量が保存するのだからエネルギーもそのまま、と考えたくなりますが、そうはなりません。かといって、合体したあとも塊は動き続けているので、全部が熱になって 0 になるのでもありません。このページでは、くっつく衝突で運動エネルギーがどれだけ残るかを、運動量保存で合体後の速さを出すところから順に導き、残る割合が2 つの質量だけで決まることを見ます。

下の図では、左の球 \(\mathrm{A}\) が、止まっている球 \(\mathrm{B}\) に正面から当たるようすを見られます。上の行に、いまの質量と反発係数が出ています。はじめは反発係数が 1 の弾性衝突なので、同じ質量どうしだと速度がそっくり入れ替わります。「くっつく e=0」を押すと、この解説で扱う合体する衝突に変わります。「反発係数 e」のスライダーを 1 から 0 へゆっくり下げると、跳ね返りが弱まって最後に合体するまでを続けて見られます。「棒を見る」を押すと、運動量と運動エネルギーの棒が出ます。運動量の棒が衝突の前後で変わらないのに、運動エネルギーの棒は減って、減ったぶんが赤い「熱」として積まれることを確かめてください。「B の質量」を動かすと、残る割合が質量の比でどう変わるかを試せます。「⟲ 最初から」でいつでもはじめに戻せます。

\(2.0\ \text{kg}\) の粘土玉を \(4.0\ \text{m/s}\) で投げ、止まっている同じ \(2.0\ \text{kg}\) の粘土玉に当てます。ぶつかった 2 つはくっついて、1 つの塊になって動き出します。以下では、ぶつける側 \(\mathrm{A}\) の質量を \(m\)、その初速を \(v_0\)、止まっている側 \(\mathrm{B}\) の質量を \(M\) とします(この場面では \(m = M = 2.0\ \text{kg}\)、\(v_0 = 4.0\ \text{m/s}\) です)。

ぶつかっているあいだ、2 つにはたらくのはたがいに押し合う力だけで、外から水平方向の力ははたらきません。だから運動量は保存します。衝突の前後で \(mv\) の合計は変わりません。

衝突前の運動エネルギーは \(K = \dfrac12 m v_0{}^{2}\) なので、数を入れるとこうなります。$$ K = \frac12 \times 2.0 \times 4.0^{2} = 16\ \text{J} $$この \(16\ \text{J}\) のうち、衝突後に残るのは何 J でしょうか。

答えは \(8.0\ \text{J}\) です。

ちょうど半分が、ぶつかったその場で粘土のへこみと発熱に出ていきます。ぶつけた粘土を触ると、ほんの少し温かくなっています。

運動量は保存しているのに、運動エネルギーは半分に減るのです。運動量とエネルギーが別の量だということが、ここではっきりします。

使う考え方:運動量保存・完全非弾性衝突・エネルギー・力学・2体問題

📐 2. 解説

ここからが本題です。求める道すじは 2 段階あります。まず運動量保存を立てて、合体したあとの速さ \(V\) を \(m,\ M,\ v_0\) で表します。次に、その \(V\) を衝突後の運動エネルギーの式に代入して、衝突前の \(K\) と比べます。ここで \((m+M)\) が 1 つ約分できて、残る割合が質量だけの式になります。

① 合体後の速さ

① 合体後の速さの場面

まずは合体したあとの速さから。くっついて 1 つの塊になるので、衝突後は 2 つが同じ速さで動きます。これを \(V\) とおきます。

右向きを正にとります。衝突前に動いているのは \(\mathrm{A}\) だけなので運動量は \(m v_0\)、衝突後は質量 \(m + M\) の塊が速さ \(V\) で動くので運動量は \((m+M)V\)。これが等しい、というのが運動量保存です。

$$ m v_0 = (m + M)V $$

両辺を \(m + M\) で割れば、\(V\) が求まります。

$$ V = \frac{m v_0}{m + M} $$

これを①式とします。

いまは \(m = M\) なので分母が \(2m\) になり、\(V\) は \(v_0\) のちょうど半分。数を入れると \(V = 2.0\ \text{m/s}\) です。

$$ V = \dfrac{m v_0}{m + M} $$

② 残るエネルギー

② 残るエネルギーの場面

次に、衝突後の運動エネルギー \(K'\) を出します。塊の質量は \(m + M\)、速さは \(V\) なので、

$$ K' = \frac12 (m + M)V^{2} $$

ここに①式の \(V = \dfrac{m v_0}{m+M}\) を代入します。

$$ K' = \frac12 (m + M)\left(\frac{m v_0}{m + M}\right)^{2} = \frac12 \cdot \frac{m^{2} v_0{}^{2}}{m + M} $$

2 乗したので分母は \((m+M)^{2}\)、その前に \((m+M)\) が 1 つあるので、\((m+M)\) が 1 つ約分できます。ここが山場です。

衝突前は \(K = \dfrac12 m v_0{}^{2}\) でした。\(K'\) を \(K\) で割ると \(\dfrac12\) も \(v_0{}^{2}\) も消え、\(m^{2}\) を \(m\) で割った \(m\) だけが残ります。

$$ \frac{K'}{K} = \frac{m}{m + M} $$

残る割合は、2 つの質量だけで決まります。

同じ質量どうしなら \(m = M\) なので、残る割合は \(\dfrac{m}{2m} = \dfrac12\)。ちょうど半分です。

つまり、ぶつかったその瞬間に運動エネルギーの半分が失われます。失われたぶんは消えたのではなく、粘土のへこみと発熱に移っただけです。

\(m = M\) → \(\dfrac12\)

🔑 3. まとめ

くっつく衝突では、運動量は保存し、運動エネルギーは減ります。この 2 つを混ぜないことが、衝突の問題を落とさないこつです。

どこへ消えたかの場面

減ったぶんは、粘土がへこみ、熱くなったぶんです。力学的エネルギーの外へ出ていったのであって、なくなったわけではありません。

残るのは \(\dfrac{m}{m+M}\) 倍。ぶつける側が重いほど残り、相手が重いほど残りません。相手が 3 倍重ければ \(M = 3m\) なので、残るのは \(\dfrac{m}{4m} = \dfrac14\) だけです。

極端な例が、弾丸を木片に撃ちこむ場合です。\(10\ \text{g}\)、つまり \(0.010\ \text{kg}\) の弾丸が \(1.0\ \text{kg}\) の木片に埋まると、

$$ \frac{K'}{K} = \frac{0.010}{0.010 + 1.0} \fallingdotseq 0.0099 $$

残るのはおよそ 1 %。99 % が熱と変形に出ていきます。

\(m = M\) → 半分が熱