物理 > 動く解説 > 物理 第1編 力と運動|第3章 運動量の保存

重心の速度の求め方

❓ 1. 疑問と結論

ばねでつないだ 2 つの物体の,片方だけを押す。2 つをまとめた重心は,どんな動きをする?

🎯 結論:重心は等速直線運動

外から力がはたらかなければ,2 つの物体の重心は等速直線運動をする。
💡
重心……2 つの物体の位置を,質量で重みをつけて平均した点
  • 🔵 \(\mathrm{A}\) と \(\mathrm{B}\)

    速さはたえず変わる。\(\mathrm{A}\) は 0.50〜1.5 m/s,\(\mathrm{B}\) は 0〜2.0 m/s。

  • 🟣 重心 \(\mathrm{G}\)

    速さは1.0 m/s のまま変わらない。

図は \(M = 2.0\ \text{kg}\),\(m = 1.0\ \text{kg}\),\(v_0 = 1.5\ \text{m/s}\)。

なぜ \(\mathrm{G}\) だけ等速なのか。重心の速度の式と,全運動量が変わらない理由の 2 つに分けて見る。

❓ 重心は物体の無い所にある。その「速さ」とは何の速さ?

2 つをまとめて1 個の物体とみなしたときの代表点の速さ。全質量 \(M + m\) の 1 個の物体が,全運動量と同じ運動量で動くときの速さと同じになる。

📐 2. 解説①:重心の速度の式

位置 → 変化量 → 速度 の順に,重心の速度を式にする。

📍 重心の位置

  1. 質量で重みをつけて平均

    $$ x_{\mathrm{G}} = \dfrac{Mx_{\mathrm{A}} + mx_{\mathrm{B}}}{M + m} $$

  2. 重いほうに寄る

    \(M = 2m\) なので,\(\mathrm{G}\) は重い \(\mathrm{A}\) の近くにある。

📏 変化量 → 速度

  1. 変化量でも同じ形

    短い時間 \(\Delta t\) に動いた長さで書く。

    $$ \Delta x_{\mathrm{G}} = \dfrac{M\,\Delta x_{\mathrm{A}} + m\,\Delta x_{\mathrm{B}}}{M + m} $$

  2. 両辺を \(\Delta t\) でわる

    $$ \dfrac{\Delta x_{\mathrm{G}}}{\Delta t} = \dfrac{M\dfrac{\Delta x_{\mathrm{A}}}{\Delta t} + m\dfrac{\Delta x_{\mathrm{B}}}{\Delta t}}{M + m} $$

  3. \(\Delta t\) を十分短く

    長さ ÷ 時間は,その瞬間の速度になる。

📐 なぜ,変化量どうしでも同じ形になるのか

位置の式はどの時刻でも成り立つ。時刻 \(t_1\) と \(t_2\) で書いて引き算をすると,分母の \(M + m\) は定数なので,そのまま通り抜ける。

$$ x_{\mathrm{G}}(t_2) - x_{\mathrm{G}}(t_1) = \dfrac{M\,\Delta x_{\mathrm{A}} + m\,\Delta x_{\mathrm{B}}}{M + m} $$

🎯 重心の速度の式

$$ v_{\mathrm{G}} = \dfrac{Mv_{\mathrm{A}} + mv_{\mathrm{B}}}{M + m} $$
\(v_{\mathrm{A}}\),\(v_{\mathrm{B}}\)〔m/s〕:\(\mathrm{A}\),\(\mathrm{B}\) の速度(右向きを正)
\(M\),\(m\)〔kg〕:\(\mathrm{A}\),\(\mathrm{B}\) の質量
  • 📐 位置の式と同じ形

    \(x\) を \(v\) に替えただけ。速度も質量の重みつき平均。

  • ⚠️ 等速と決めつけていない

    \(\Delta t\) を十分短くとれば,どんな動きでもその瞬間の速度になる。

🔒 3. 解説②:全運動量は変わらない

重心の速度の式の分子 \(Mv_{\mathrm{A}} + mv_{\mathrm{B}}\) は全運動量。これが変わらないので,\(v_{\mathrm{G}}\) も変わらない。

🤝 ばねの力は内力

💡
内力……まとめて見た物体の内側で,物体どうしがおよぼし合う力
  1. 2 つを 1 つの物体系に

    水平な力はばねの弾性力だけ(床はなめらか)。

  2. 同じ大きさ・逆向き

    ばねは \(\mathrm{A}\) と \(\mathrm{B}\) を,同じ大きさ・逆向きに押し引きする(作用反作用)。

  3. 足すと 0

    内力は打ち消し合い,全運動量を変えない。

❓ ばねが自然長でないときも,この考え方は使える?

使える。ばねの力は内力なので,伸びていても縮んでいても全運動量は変わらない。

⚖️ 全運動量は保存する

  1. はじめの値のまま

    はじめは \(v_{\mathrm{A}} = v_0\),\(v_{\mathrm{B}} = 0\)。

    \(Mv_{\mathrm{A}} + mv_{\mathrm{B}} = Mv_0\)

  2. \(v_{\mathrm{G}}\) の式に入れる

    \(v_{\mathrm{G}} = \dfrac{Mv_0}{M + m}\)

  3. 数で見る

    \(v_{\mathrm{G}} = \dfrac{2.0 \times 1.5}{3.0} = 1.0\ \text{m/s}\)

🔥 ここが超重要

外力が 0 なら,内力がどうはたらいても重心は等速直線運動。ばねでも,衝突でも,物体がいくつあっても同じ。

🔬 発展:重心の加速度を決めるのは,外力だけ

速度の変化を \(\Delta t\) でわると,加速度でも同じ形になる。

$$ (M + m)\,a_{\mathrm{G}} = Ma_{\mathrm{A}} + ma_{\mathrm{B}} $$

右辺は,\(\mathrm{A}\) と \(\mathrm{B}\) にはたらく力の合計。ばねの力は打ち消し合うので,残るのは外力だけ。

$$ (M + m)\,a_{\mathrm{G}} = (\text{外力の和}) $$

物体が何個でも,重心の速度は「全運動量 ÷ 全質量」。重心は,全質量が集まった 1 個の物体のようにふるまう。

🧮 4. 確かめ:重心の速さは,ただの平均?

重心の速さは,\(\mathrm{A}\) と \(\mathrm{B}\) の速さのちょうど平均? 答える前に,自分の答えを決めてから読む。

  1. 答えは「いいえ」

    重みは質量。ただの平均ではない。

  2. 重いほうの速さに近い

    図の数(\(M = 2m\))なら,

    \(v_{\mathrm{G}} = \dfrac{2v_{\mathrm{A}} + v_{\mathrm{B}}}{3}\)

    重い \(\mathrm{A}\) の速さ寄りになる。

  1. ただの平均になるとき

    2 つの質量が同じ(\(M = m\))ときだけ。

    \(v_{\mathrm{G}} = \dfrac{v_{\mathrm{A}} + v_{\mathrm{B}}}{2}\)

    \(\mathrm{G}\) はばねのまん中に来る。

⚠️ 要注意!

\(v_{\mathrm{G}} = \dfrac{v_{\mathrm{A}} + v_{\mathrm{B}}}{2}\) は,\(M = m\) のときだけの形。重心は,位置も速度も重いほうに寄る。

🔍 5. もっと詳しく:重心から見ると

重心と一緒に動きながら見る。重心は等速なので,慣性力ははたらかない。

👀 重心から見た全運動量は 0

  1. 見える速度

    \(\mathrm{A}\) は \(v_{\mathrm{A}} - v_{\mathrm{G}}\),\(\mathrm{B}\) は \(v_{\mathrm{B}} - v_{\mathrm{G}}\)。

  2. 全運動量を計算する

    $$ M(v_{\mathrm{A}} - v_{\mathrm{G}}) + m(v_{\mathrm{B}} - v_{\mathrm{G}}) $$

    $$ {}= (Mv_{\mathrm{A}} + mv_{\mathrm{B}}) - (M + m)v_{\mathrm{G}} = 0 $$

↔️ いつも逆向きに動く

  • ↔️ 片方が右なら,もう片方は左

    全運動量がいつも 0 だから。

  • 🌀 \(\mathrm{G}\) に固定したばねの振り子

    2 つは \(\mathrm{G}\) をはさんで伸び縮みする。2 物体の問題が,1 物体の振動になる。

💬 補足

図の \(X\) は \(\mathrm{B}\) のずれ,\(k_{\mathrm{B}}\) は \(\mathrm{G}\) から \(\mathrm{B}\) までの短いばねのばね定数,\(T\) は振動の周期。

🛑 6. もっと詳しく:押した A は止まる?

\(\mathrm{A}\) の速さを「\(v_{\mathrm{G}}\)(一定)+ 重心から見た振動」に分けて考える。

  1. 振れ幅

    はじめ \(\mathrm{A}\) は重心より \(\dfrac{mv_0}{M + m}\) だけ速い。ばねは自然長から始まるので,これが振れ幅。

  2. いちばん遅いとき

    $$ (v_{\mathrm{A}})_{\text{最小}} = v_{\mathrm{G}} - \dfrac{mv_0}{M + m} $$

  3. 数で見る

    \(v_{\mathrm{G}} = 1.0\ \text{m/s}\),振れ幅 0.50 m/s。\(\mathrm{A}\) は 0.50〜1.5 m/s で,止まらない。

  1. 止まる条件

    振れ幅が \(v_{\mathrm{G}}\) 以上なら,速さは 0 を通る。

    $$ \dfrac{mv_0}{M + m} \geqq \dfrac{Mv_0}{M + m} $$

  2. 分母は同じ

    \(m \geqq M\)

    押される \(\mathrm{B}\) が同じか重いときだけ。

⚠️ 要注意!

「ばねに押し返されるので,いつか必ず止まる」は誤り。\(\mathrm{A}\) は \(v_{\mathrm{G}}\) で進みながら振れる。振れ幅が \(v_{\mathrm{G}}\) に届かなければ止まらない。

🔑 まとめ