物理 > 動く解説 > 物理 第1編 力と運動|第4章 円運動と万有引力

慣性力の分解,sin? cos?

❓ 1. 疑問と結論

なめらかな床の上の三角台(傾き \(\theta\))。斜面を小物体(質量 \(m\))がすべり下りると,台は右へ加速度 \(A\) で動く。台から見ると,小物体には慣性力 \(mA\) がはたらく。この慣性力を斜面の向きに分けると,斜面に沿った成分は \(\sin\theta\)? \(\cos\theta\)?

  • 🟫 台

    地面に対して,右へ加速度 \(A\) で動く。

  • 🧍 台から見ると(非慣性系)

    重力 \(mg\)・垂直抗力 \(N\) のほかに,慣性力 \(mA\)。

  • ⬅️ 慣性力の向き

    台の加速度と逆向き,つまり水平左向き。

🎯 結論:慣性力も重力と同じように分ける

慣性力も重力と同じように,斜面に平行・垂直な向きに分ける。慣性力は水平なので,平行な成分が \(mA\cos\theta\),垂直な成分が \(mA\sin\theta\)。
  • ↙️ 平行な成分

    \(mA\cos\theta\),斜面を下る向き。

  • ↖️ 垂直な成分

    \(mA\sin\theta\),斜面から離れる向き。

🔥 ここが超重要

鉛直な重力とは \(\sin\) と \(\cos\) が入れかわる。重力は平行が \(mg\sin\theta\),垂直が \(mg\cos\theta\)。

📚 2. 解説

力を分けるときは,分ける前の力と成分のあいだにできる角 \(\theta\) を探す。重力(解説①)と慣性力(解説②)で,その角の場所がちがう。

💡
角 \(\theta\) のとなりの成分……分ける前の力と,角 \(\theta\) をはさむ成分。大きさは(力)\(\times\cos\theta\)。向かいの成分は(力)\(\times\sin\theta\)

⬇️ 解説①:重力を分ける

  1. 重力は鉛直下向き

    重心から,鉛直下向きに \(mg\)。

  2. 垂直な線も θ 傾く

    斜面が水平から \(\theta\) 傾くと,斜面に垂直な線は鉛直から \(\theta\) 傾く。

  3. 角 θ は垂直な成分のとなり

    垂直な成分が \(mg\cos\theta\),平行な成分が \(mg\sin\theta\)。

⬅️ 解説②:慣性力を分ける

  1. 慣性力は水平左向き

    重心から,台の加速度と逆向きに \(mA\)。

  2. 水平と斜面の角は θ

    水平な線と斜面のあいだの角は,斜面の傾き \(\theta\) そのもの。

  3. 角 θ は平行な成分のとなり

    平行な成分が \(mA\cos\theta\)(下る向き),垂直な成分が \(mA\sin\theta\)(離れる向き)。

⚠️ 要注意!

慣性力の平行な成分を「上る向き」にとらない。左向きの力は,右上がりの斜面を下る向きの成分をもつ。

📐 なぜ入れかわるのか

  • ⊥ 重力と慣性力は直角

    重力は鉛直,慣性力は水平。

  • 🔄 角 θ の場所が入れかわる

    重力では垂直な成分のとなり,慣性力では平行な成分のとなり。

平行(下る向き)垂直
重力 \(mg\)\(mg\sin\theta\)\(mg\cos\theta\)(押しつける)
慣性力 \(mA\)\(mA\cos\theta\)\(mA\sin\theta\)(離れる)

🏃 解説③:斜面に沿った運動方程式

  1. 下る向きを正に

    下る向きの力は,\(mg\sin\theta\) と \(mA\cos\theta\)。垂直抗力は,この向きの成分なし。

  2. 運動方程式

    台から見た加速度を \(a\) とすると,

    \(ma = mg\sin\theta + mA\cos\theta\)

  3. 両辺を m でわる

    \(a = g\sin\theta + A\cos\theta\)

$$ a = g\sin\theta + A\cos\theta $$
\(a\)〔m/s²〕:台から見た小物体の加速度
\(A\)〔m/s²〕:台の加速度(地面に対して)
\(g\)〔m/s²〕:重力加速度の大きさ
\(\theta\):斜面の傾きの角
  • 🧊 台を固定すると

    \(A = 0\) なので \(a = g\sin\theta\)。点線の箱が,その位置。

  • 🏃 台が動くと

    \(A\cos\theta\) だけ大きい。台が右へ逃げていくから。

🔍 3. もっと詳しく

ショートで扱わなかった先の話。斜面に垂直な向きは「つりあい」で,垂直抗力 \(N\) が決まる。地面から見ても,同じ答えになる。

⚖️ 斜面に垂直な向き:つりあい

  1. 垂直な向きは加速度 0

    台から見ると,小物体は斜面に沿ってしか動かない。

  2. 向きで 2 組に分ける

    離れる向き:\(N\) と \(mA\sin\theta\)。押しつける向き:\(mg\cos\theta\)。

  3. つりあいの式

    \(N + mA\sin\theta = mg\cos\theta\)

$$ N = m(g\cos\theta - A\sin\theta) $$
\(N\)〔N〕:斜面から受ける垂直抗力
\(m\)〔kg〕:小物体の質量
\(A\)〔m/s²〕:台の加速度
💬 補足

台を固定したときの \(mg\cos\theta\) より,\(mA\sin\theta\) だけ小さい。足もとの斜面が逃げていくから。

🌍 地面から見ると(慣性系)

  1. 慣性力は無い

    地面から見ると,力は重力と垂直抗力だけ。

  2. 加速度を合わせる

    小物体の加速度は,台の \(A\) と,台から見た \(a\) を合わせたもの。斜面を下る向きの成分は \(a - A\cos\theta\)。

  3. 運動方程式

    \(m(a - A\cos\theta) = mg\sin\theta\)

    移項すると,解説③と同じ式になる。

💬 補足

左辺の \(-mA\cos\theta\) を右辺へ移すと,台から見たときの慣性力の成分 \(mA\cos\theta\) になる。

🔑 まとめ