物理 > 動く解説 > 物理 第1編 力と運動|第4章 円運動と万有引力

台を右へ押すのは何の力?

❓ 1. 疑問と結論

なめらかな床の上に,質量 \(M\) の三角台を置き,なめらかな斜面に質量 \(m\) の小物体をのせる。小物体がすべり下りると,台は右へ動き出す。誰も押していないのに,台を右へ押しているのは何の力?

🎯 結論:小物体が斜面を押す力

台を右へ押しているのは,小物体が斜面を押す力。その水平成分が,台を右へ押す。
💡
作用・反作用の法則……2 つの物体が力を及ぼしあうとき,2 つの力は同じ大きさで逆向き。
  • 🔴 台が受ける力 \(N\)

    小物体が斜面を押す力。斜面に押しこむ向き。

  • 🟠 その水平成分

    右向き。これが台を右へ押す。

なぜか。物体を1 つずつ取り出し,台が受ける力だけを数える。

📚 2. 解説

2 つを分け(解説①),台が受ける力を挙げ(解説②),水平成分を出して(解説③),台の運動方程式を立てる(解説④)。

✂️ 解説①:1 つずつ取り出す

  1. 分けて考える

    接している所で,2 つを少し離して描く。

  2. 小物体が受ける力

    斜面から垂直抗力 \(N\)。斜面から離れる向き。

  3. 台が受ける力

    作用・反作用なので,同じ大きさ \(N\)・逆向き。

台が受ける \(N\) は,斜面に押しこむ向き。これが「小物体が斜面を押す力」だ。

🧱 解説②:台が受ける力は 3 つ

  • 🔵 重力 \(Mg\)

    台の重心から,鉛直下向き。

  • 🔴 床からの垂直抗力 \(R\)

    床から,鉛直上向き。

  • 🔴 小物体から押される力 \(N\)

    斜面に押しこむ向き。

\(Mg\) と \(R\) は鉛直なので,水平な成分をもたない。水平な成分をもつのは \(N\) だけ。

💬 補足

3 つの矢印は同じ縮尺。いちばん大きいのは \(R\) で,\(Mg\) と \(N\) の鉛直な部分を支えている。

📐 解説③:水平成分は \(N\sin\theta\)

  1. 鉛直から \(\theta\) 傾く

    斜面は水平から \(\theta\)。斜面に垂直な \(N\) は,鉛直から \(\theta\)。

  2. \(\theta\) の向かい側が水平

    水平成分は \(N\sin\theta\)(右向き)。鉛直成分は \(N\cos\theta\)。

🚀 解説④:台の運動方程式

右向きを正とする。台の質量は \(M\),加速度は \(A\),水平な力は \(N\sin\theta\) だけなので,

$$ MA = N\sin\theta $$
\(M\)〔kg〕:台の質量
\(A\)〔m/s²〕:台の加速度
\(N\)〔N〕:小物体から押される力
⚠️ 要注意!

左辺を \((M + m)A\) にしない。小物体は斜面をすべっていて,台と同じ加速度では動かない。

台だけを取り出したので,左辺の質量は \(M\) だけ。

🔬 3. もっと詳しく

小物体のほうも取り出すと,何が分かるか。鉛直な向きでは,何がつりあっているか。

🔁 小物体も取り出すと:水平の運動量は変わらない

小物体の水平な加速度を \(a_x\)〔m/s²〕(右向きを正)とする。小物体が受ける水平な力は,\(N\) の水平成分だけ。

  1. 小物体の運動方程式

    \(N\) の水平成分は左向きなので,

    \(ma_x = -N\sin\theta\)

  2. 台の運動方程式(解説④)

    \(MA = N\sin\theta\)

  3. 2 本を足す

    作用・反作用の 2 力は打ち消しあうので,

    \(ma_x + MA = 0\)

はじめは 2 つとも止まっているので,水平な運動量の和は 0 のまま。

2 つは別々の加速度で動くので,2 つまとめた \((M + m)A\) の式は立たない。

⚖️ 床からの垂直抗力 \(R\) は \((M + m)g\) より小さい

  1. 台の鉛直なつりあい

    台は床から浮かないので,上向き = 下向き。

    \(R = Mg + N\cos\theta\)

  2. 小物体は下へ加速する

    小物体の鉛直な加速度を \(a_y\)〔m/s²〕(上向きを正)とする。

    \(ma_y = N\cos\theta - mg\)

    すべり下りるので \(a_y\) は負。だから \(N\cos\theta\) は \(mg\) より小さい。

\(R\) は 2 つの重さの和 \((M + m)g\) より小さい。小物体が落ちていくぶん,床を押す力が減る。

💡 もう一歩:台から見ると(非慣性系)

台に乗って見ると,台は止まって見える。台にも慣性力 \(MA\)(左向き)を入れると,水平な向きのつりあい(右向き = 左向き)は,

$$ N\sin\theta = MA $$

地面から見た運動方程式と同じ式になる。慣性力 \(MA\) は,台の重心にはたらく。

🔑 まとめ