物理 > 動く解説 > 物理 第1編 力と運動|第4章 円運動と万有引力

台はどれだけ動く?

❓ 1. 疑問と結論

なめらかな床の上の三角台。なめらかな斜面に小物体をのせて手をはなすと,小物体はすべり下り,台は右へ動く。小物体が斜面を \(l\) すべるあいだに,台はどれだけ動く?

  • 🟫 台

    地面に対して,右へ加速度 \(A\) で動く。

  • 🟦 小物体

    台から見て,斜面に沿って加速度 \(a\) ですべる。

  • ⏱️ 動き出し

    どちらも静止から同時に動き出す。

🎯 結論:距離の比 = 加速度の比

静止から同時に動き出す 2 つの等加速度運動では,動いた距離の比は,加速度の比に等しい。
$$ L : l = A : a $$
\(L\)〔m〕:台が動いた距離(地面に対して)
\(l\)〔m〕:小物体がすべった距離(台に対して)
\(A\)〔m/s²〕:台の加速度(地面に対して)
\(a\)〔m/s²〕:小物体の加速度(台から見て)
  • 🟫 台(地面から見て)

    右へ加速度 \(A\) で動き,距離 \(L\) 進む。

  • 🟦 小物体(台から見て)

    斜面に沿って加速度 \(a\) ですべり,距離 \(l\) 進む。

  • 📏 図の長さで見ると

    矢印 \(A\) と \(a\) の長さの比は,寸法線 \(L\) と \(l\) の長さの比と同じ。

なぜか。等加速度運動の距離の式を 2 つ立てて,わり算する。

📚 2. 解説

台と小物体のそれぞれに距離の式を立て(解説①),2 つの式をわる(解説②)。

📏 解説①:距離の式を立てる

💡
静止から動き出す等加速度運動……時間 \(t\) のあいだに進む距離は,\(\dfrac{1}{2} \times\)(加速度)\(\times\, t^2\)
  1. 台は地面から見る

    地面に対して,静止から加速度 \(A\) で動く。

    $$ L = \dfrac{1}{2}At^2 $$

  2. 寸法線は床の下

    台のはじめの位置(点線)から,いまの位置まで。

  1. 小物体は台から見る

    台に対して,静止から加速度 \(a\) ですべる。

    $$ l = \dfrac{1}{2}at^2 $$

  2. 組は台から見た \(a\)

    \(l\) は台の上で測った距離。組になる加速度も,台から見た \(a\)。

⚠️ 要注意!

\(l\) は,地面から見た小物体の移動距離ではない。台が右へ逃げるので,地面に対しては \(l\) より短い(図の値で約 0.72 \(l\))。

➗ 解説②:わると時間が消える

  1. 時間 \(t\) は同じ

    同時に動き出し,同じあいだの距離をくらべる。

  2. 2 つの式をわる

    左辺どうし,右辺どうしをわると,

    $$ \dfrac{L}{l} = \dfrac{\tfrac{1}{2}At^2}{\tfrac{1}{2}at^2} = \dfrac{A}{a} $$

  3. \(\dfrac{1}{2}\) と \(t^2\) が消える

    $$ L : l = A : a $$

💬 補足

同じ時間なら,加速度が 2 倍のほうが,進む距離も 2 倍。すべっている途中のどの瞬間でも,比は変わらない(図の帯の \(L/l\))。

🔥 ここが超重要

使えるのは,2 つが静止から同時に動き出すとき。初速がある・動き出す時刻がずれるときは,この比にならない。

🔍 3. もっと詳しく

ショートで扱わなかった先の話。\(A\) と \(a\) の式を入れると,\(L\) が質量と角度だけで決まる。重心で見ると,加速度を使わずに同じ答えが出る。

🧮 \(A\) と \(a\) を入れると

  1. 台の加速度

    台の運動方程式と,台から見た斜面に垂直な向きのつりあいから,

    $$ A = \dfrac{mg\sin\theta\cos\theta}{M + m\sin^2\theta} $$

  2. 台から見た加速度

    慣性力 \(mA\) の斜面に沿った成分を足して,

    $$ a = g\sin\theta + A\cos\theta $$

    $$ {}= \dfrac{(M + m)g\sin\theta}{M + m\sin^2\theta} $$

  3. 比をつくる

    \(M + m\sin^2\theta\) と \(g\sin\theta\) が約分で消える。

    $$ \dfrac{A}{a} = \dfrac{m\cos\theta}{M + m} $$

$$ L = \dfrac{m\cos\theta}{M + m}\,l $$
\(M\),\(m\)〔kg〕:台,小物体の質量
\(\theta\):斜面の傾きの角
\(l\)〔m〕:小物体がすべった距離(台に対して)
💬 補足

答えに \(g\) は入らない。\(g\) を大きくすると,\(A\) も \(a\) も同じ割合で大きくなるから。

⚖️ 別解:重心は水平に動かない

💡
重心……2 つの物体の位置を,質量で重みをつけて平均した点
  1. 水平な外力が無い

    外力(重力・床の垂直抗力)は鉛直だけ。全体の重心は水平に動かない(紫の線)。

  2. 小物体の水平移動

    台から見て左へ \(l\cos\theta\)。台が右へ \(L\) 動くので,地面に対しては左へ \(l\cos\theta - L\)。

  3. 質量 × 水平移動が等しい

    $$ ML = m(l\cos\theta - L) $$

    $$ L = \dfrac{m\cos\theta}{M + m}\,l $$

💬 補足

加速度を使う道と,重心を使う道で,同じ答え。片方で解いたら,もう片方で確かめられる。

🔑 まとめ