物理 > 動く解説 > 物理 第1編 力と運動|第3章 運動量の保存

重心から見ると,ただのばね振り子

❓ 1. 疑問と結論

なめらかな床の上で,同じ質量 \(m\)〔kg〕の物体 \(\mathrm{A}\) と \(\mathrm{B}\) を,ばね定数 \(k\)〔N/m〕の軽いばねでつなぐ。\(\mathrm{A}\) だけを右へ押し出すと,2 つは伸び縮みしながら進む。振動の周期はいくら?

🎯 結論:重心から見ると,ただのばね振り子

重心から見ると重心は止まって見えるので,そこを壁とみなせる。
質量が等しければ,2 つは半分の長さのばね(ばね定数 \(2k\))のばね振り子。
$$ T = 2\pi\sqrt{\dfrac{m}{2k}} $$
💡
重心……2 つの物体の位置を,質量で重みをつけて平均した点。質量が等しければ,2 つのまん中
  • 🟣 重心 \(\mathrm{G}\)

    重心と一緒に動きながら見ると,\(\mathrm{G}\) は止まって見える。

  • 🧱 \(\mathrm{G}\) を壁に

    \(\mathrm{B}\) は,壁までの半分のばね(\(2k\))につながれたばね振り子。\(\mathrm{A}\) も同じ。

なぜ \(\mathrm{G}\) は止まって見えるのか。なぜ \(2k\) なのか。この 2 つを順に見る。

❓ 地上から見ても,周期は同じ?

同じ。地上から見ると,重心から見た振動に重心の等速運動が重なるだけ。伸び縮みをくり返す時間は変わらない。

📚 2. 解説と確かめ

重心が止まって見える理由(解説①),半分のばねの周期(解説②),質量がちがうとき(解説③)の順に見る。最後に,いちばん多い思い違いで確かめる。

👀 解説①:重心は止まって見える

外から力がはたらかなければ,重心は等速で進む。その重心と一緒に動いて見る。

🚀 外力が無いので,重心は等速

  1. 水平な力はばねの力だけ

    床はなめらか。ばねの力は,\(\mathrm{A}\) と \(\mathrm{B}\) がおよぼし合う内力。

  2. 全運動量は変わらない

    内力は同じ大きさ・逆向きで,打ち消し合う。

  3. 重心は等速直線運動

    重心の速度は「全運動量 ÷ 全質量」なので,一定。

🛒 重心から見ても慣性系

💡
慣性系……慣性の法則が成り立つ立場。慣性力を考えなくてよい
  1. 等速で動く人から見る

    重心と一緒に等速で動く人から見ても,慣性系。慣性力ははたらかない。

  2. \(\mathrm{G}\) はばねのまん中

    質量が等しいので,\(\mathrm{G}\) は 2 つのまん中。ばねのまん中の巻き目が,いつも \(\mathrm{G}\)。

  3. まん中が止まって見える

    重心から見ると,ばねのまん中は動かない。そこに壁があると考えてよい。

❓ 質量が等しいと,なぜ重心はまん中?

重心は,2 つの物体のあいだを質量の逆比に分ける(\(\mathrm{AG} : \mathrm{GB} = m : m = 1 : 1\))。軽いばねは全体が一様に伸び縮みするので,伸びても縮んでも,まん中の巻き目が \(\mathrm{G}\)。

🧱 解説②:半分のばねのばね振り子

\(\mathrm{G}\) を壁とみなすと,\(\mathrm{B}\) は壁につながれたばね振り子。つながっているのは半分の長さのばね。

✂️ 半分の長さのばねは \(2k\)

  1. \(\mathrm{B}\) につながるのは半分

    壁(\(\mathrm{G}\))から \(\mathrm{B}\) までの,半分の長さのばね。

  2. 同じ力で,伸びは半分

    ばね全体を力 \(F\)〔N〕で引くと \(x\)〔m〕伸びるとする。半分の部分も同じ \(F\) で引かれ,伸びは \(\dfrac{x}{2}\)。

  3. ばね定数は 2 倍

    $$ \dfrac{F}{\;\dfrac{x}{2}\;} = 2 \times \dfrac{F}{x} = 2k $$

    ばね定数は長さに反比例する。\(\dfrac{1}{3}\) の長さなら 3 倍。

⏱️ ばね振り子の周期の式に入れる

$$ T = 2\pi\sqrt{\dfrac{\text{質量}}{\text{ばね定数}}} $$
\(T\)〔s〕:周期(1 往復する時間)
  1. \(\mathrm{B}\) が受ける力

    \(\mathrm{B}\) が振動の中心から \(X\)〔m〕ずれると,半分のばねも \(X\) 伸びる。力の大きさは \(2kX\) で,ずれと逆向き。

  2. 質量 \(m\),ばね定数 \(2k\) を入れる

    $$ T = 2\pi\sqrt{\dfrac{m}{2k}} $$

  3. 数で見る

    図は \(m = 2.0\ \text{kg}\),\(k = 30\ \text{N/m}\)。

    \(T = 2\pi\sqrt{\dfrac{2.0}{2 \times 30}} \fallingdotseq 1.15\ \text{s}\)

💬 補足

図の上の帯の \(X\) は \(\mathrm{B}\) のずれ,\(k_{\mathrm{B}}\) は \(\mathrm{G}\) から \(\mathrm{B}\) までのばねのばね定数(いまは \(2k\)),\(T\) は周期。

🔁 \(\mathrm{A}\) も同じ周期

  • 🧱 \(\mathrm{A}\) の側も半分のばね

    壁から \(\mathrm{A}\) までも半分の長さ。質量 \(m\),ばね定数 \(2k\) で,\(\mathrm{B}\) と同じ。

  • ↔️ 同じ周期で,いつも逆向き

    2 つは同じ周期で,\(\mathrm{G}\) をはさんで逆向きに振れる。

⚖️ 解説③:質量がちがうとき

ショートでは扱わなかった,質量がちがうとき。\(\mathrm{A}\) の質量を \(M\)〔kg〕,\(\mathrm{B}\) の質量を \(m\)〔kg〕とする。手順は同じで,\(\mathrm{G}\) の位置だけが変わる。

📍 \(\mathrm{G}\) はばねを \(m : M\) に分ける

  1. 質量の逆比に内分

    $$ \mathrm{AG} : \mathrm{GB} = m : M $$

    \(M > m\) なら,\(\mathrm{G}\) は重い \(\mathrm{A}\) 寄り。

  2. 割合はいつも同じ

    伸び縮みしても比は変わらない。\(\mathrm{GB}\) の部分は,いつもばね全体の \(\dfrac{M}{M + m}\)。

🧮 \(k_{\mathrm{B}}\) と周期

  1. 長さが \(\dfrac{M}{M + m}\) 倍なので

    ばね定数は逆数倍。\(\mathrm{G}\) から \(\mathrm{B}\) までのばねのばね定数を \(k_{\mathrm{B}}\)〔N/m〕とする。

    $$ k_{\mathrm{B}} = \dfrac{M + m}{M}\,k $$

  2. 質量 \(m\),ばね定数 \(k_{\mathrm{B}}\) を入れる

    $$ T = 2\pi\sqrt{\dfrac{m}{k_{\mathrm{B}}}} = 2\pi\sqrt{\dfrac{Mm}{(M + m)k}} $$

  3. 数で見る

    図は \(M = 2.0\ \text{kg}\),\(m = 1.0\ \text{kg}\),\(k = 30\ \text{N/m}\)。

    \(k_{\mathrm{B}} = \dfrac{3.0}{2.0} \times 30 = 45\ \text{N/m}\)

    \(T = 2\pi\sqrt{\dfrac{1.0}{45}} \fallingdotseq 0.94\ \text{s}\)

$$ T = 2\pi\sqrt{\dfrac{Mm}{(M + m)k}} $$
\(M\),\(m\)〔kg〕:\(\mathrm{A}\),\(\mathrm{B}\) の質量
\(k\)〔N/m〕:ばね全体のばね定数

🔁 \(\mathrm{A}\) の側でも同じ周期

  1. \(\mathrm{AG}\) はばね全体の \(\dfrac{m}{M + m}\)

    \(\mathrm{A}\) から \(\mathrm{G}\) までのばねのばね定数を \(k_{\mathrm{A}}\)〔N/m〕とする。

    $$ k_{\mathrm{A}} = \dfrac{M + m}{m}\,k $$

  2. 質量 \(M\) を入れる

    $$ T = 2\pi\sqrt{\dfrac{M}{k_{\mathrm{A}}}} = 2\pi\sqrt{\dfrac{Mm}{(M + m)k}} $$

    \(\mathrm{B}\) と同じ周期。

  3. \(M = m\) で確かめる

    $$ 2\pi\sqrt{\dfrac{m \times m}{2m \times k}} = 2\pi\sqrt{\dfrac{m}{2k}} $$

    ショートの答えにもどる。

🔥 ここが超重要

止まって見える \(\mathrm{G}\) を壁にして,\(\mathrm{G}\) からのばねの長さでばね定数を決める。質量が等しくても,ちがっても同じ手順。

🧮 確かめ:ばね定数は \(k\) のまま?

質量が等しいとき,ばね全体の \(k\) で「\(T = 2\pi\sqrt{\dfrac{m}{k}}\)」としてよい? 答える前に,自分の答えを決めてから読む。

  1. 答えは「いいえ」

    ばね全体の \(k\) を使うのは,\(\mathrm{A}\) を動かない壁とみなしたのと同じ。

  2. \(\mathrm{A}\) も動いている

    重心から見ても,\(\mathrm{A}\) は \(\mathrm{B}\) と逆向きに振れる。止まって見えるのは \(\mathrm{G}\)。

  3. \(k\) のままだと長すぎる

    \(2\pi\sqrt{\dfrac{m}{k}}\) は,正しい周期 \(2\pi\sqrt{\dfrac{m}{2k}}\) の \(\sqrt{2}\) 倍。

⚠️ 要注意!

壁は \(\mathrm{A}\) ではなく \(\mathrm{G}\) に立てる。ばね定数は,\(\mathrm{G}\) からのばねの長さで決める(全体の \(k\) ではない)。\(k\) のままでよいのは,\(\mathrm{A}\) がずっと重いときだけ(🔍 3. もっと詳しく)。

🔑 まとめ

🔍 3. もっと詳しく

ショートでは流した所。知りたい所だけ読む。

🛒 なぜ重心から見ても慣性系か

動きながら見ると,ふつうは慣性力を考える。重心から見るときに要らないのはなぜか。

  1. 慣性力は,見る人の加速度から

    見る人が加速度 \(a\)〔\(\text{m/s}^2\)〕で動くと,質量 \(m\) の \(\mathrm{B}\) に慣性力 \(-ma\) が加わって見える。

  2. 重心の加速度は 0

    重心は等速なので \(a = 0\)。慣性力も 0。

  3. はたらく力はばねの力だけ

    重心から見ても,\(\mathrm{B}\) にはたらく水平の力はばねの力だけ。

❓ 重心が加速するときは?

外から力がはたらいて重心が加速すると,重心から見た立場は慣性系でなくなる。各物体に慣性力を加えて考える。

🌊 地上から見ると「等速 + 単振動」

地上から見た \(\mathrm{B}\) の動きは,2 つの動きの足し算。

  1. 重心の等速運動

    \(\mathrm{G}\) は一定の速さで右へ進む。

  2. 重心から見た単振動

    \(\mathrm{B}\) は振動の中心(点線)のまわりを,周期 \(T\) で振れる。中心は \(\mathrm{G}\) と一緒に進む。

  3. 足し合わせる

    地上から見ると,進みながら振れる。\(\mathrm{B}\) の速さは,\(\mathrm{G}\) の速さを中心に増えたり減ったりする。

🔬 発展:換算質量で解く

壁を考えずに,2 物体の距離の振動として解く道もある。答えは同じ。

💡
換算質量……\(\mu = \dfrac{Mm}{M + m}\)〔kg〕。2 物体の距離の振動で,質量の役をする量
  1. 運動方程式

    右向きを正,ばね全体の伸びを \(u\)〔m〕,\(\mathrm{A}\),\(\mathrm{B}\) の加速度を \(a_{\mathrm{A}}\),\(a_{\mathrm{B}}\)〔\(\text{m/s}^2\)〕とする。

    \(Ma_{\mathrm{A}} = ku\),\(ma_{\mathrm{B}} = -ku\)

  2. 伸び \(u\) の加速度

    \(u\) の加速度は \(a_{\mathrm{B}} - a_{\mathrm{A}}\)。

    $$ a_{\mathrm{B}} - a_{\mathrm{A}} = -k\left(\dfrac{1}{M} + \dfrac{1}{m}\right)u $$ $$ {}= -\dfrac{k}{\mu}\,u $$

  3. 質量 \(\mu\),ばね定数 \(k\) の単振動

    $$ T = 2\pi\sqrt{\dfrac{\mu}{k}} = 2\pi\sqrt{\dfrac{Mm}{(M + m)k}} $$

    解説③と同じ周期。

💬 補足

図の \(X\) は重心から見た \(\mathrm{B}\) のずれ。全体の伸びは \(u = \dfrac{M + m}{M}X\) で,\(u\) が振動すれば \(X\) も同じ周期で振動する。

  1. \(\mathrm{A}\) がとても重いとき

    \(M\) が \(m\) よりずっと大きいと,\(\mu \fallingdotseq m\)。\(\mathrm{G}\) は \(\mathrm{A}\) のすぐ近くで,\(\mathrm{A}\) はほとんど動かない。

    $$ T \fallingdotseq 2\pi\sqrt{\dfrac{m}{k}} $$

    ばね全体の \(k\) のままでよいのは,この場合だけ。

🔗 次に読む

もとの入試問題では,\(\mathrm{G}\) を壁とみなして,\(\mathrm{B}\) の単振動の周期を出す。